『東京島』/『メタボラ』。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/04/24
- メディア: 文庫
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帯の木村多江さんに魅かれ、思わず購入し読了。
無人島に残された、31人の男とたった1人の女、という無茶な設定。
その想像しがたい異常な世界を、見事に描いた桐野の筆力には脱帽。
これ逆に31人の女とたった1人の男、だと小説にはならんのだろうなあ…
なったとしても、スポーツ新聞の中面にあるような小説になっちまうだろう…
て、見たことないので言うほどよく知らんよ。つうか、話は横道にそれるけども、
あれって最初から最後まで通して読む人いるんだろか。見るたびに思う(見とるがな)
で、東京島である。中盤までは小説内に溢れる臨場感を存分に楽しんだが。
あとでネタバレ反転でも書くが、ラストがなあ… どうも後味悪さが残る。
あと、女のいやらしさに吐きそうになり、女の怖さに戦慄が走る。
何回か書いたことがあるかもしれないが、自分が多分に中性的だからかもしれんが、
どうも「女性女性した女性」や「男性男性した男性」が好きになれんのである。
あらためてそんな自分を再発見した次第。ま、それはともかくとして。
主人公のしぶとさには脱帽する。その辺がまた苦手なんだろけど… いやもう言うまい。
で、解説に同じ桐野の『メタボラ』の名が出ていた。これこそ新聞に連載されてた時に
断片的に見たことがあったのだが、いつか通して読みたいな、と思っていた。
それを思い出し、また書店に走った。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/07/07
- メディア: 文庫
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- 作者: 桐野 夏生
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
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どっちかというと、こっちの方が感情移入は出来た気がする。『東京島』が、生と性への
飽くなき肉食的欲求に溢れているのだとすれば、『メタボラ』は全体的にゆるい。
なんくるないさー、どうでもいいさー、て感じで。それが自分の感性に合っている。
また、すべてを失った主人公が、徐々にアイデンティティを得てゆく過程やら、
小説の中盤を占める請負労働の話などが、いちいち、自分の体験と重なったのもある。
しかしこれも、ラストがなあ… 新聞連載だったから、ここで終わらな仕方なかったのか。
あるいは、これが桐野という人の持ち味なのか。それはもうちっと、他の作品も読んでから
判断したい。次は『OUT』にしようか『女神記』にしようか。楽しみは続く。
あ、以前一度『東京島』だけで好き勝手レビューを書いたのですが、やっぱ、ひとつ読んだだけで
聞いた風なこと書いたらいかんわ、と思い直し、せめてもう一つ桐野作品を読んでから書き直そう、
ということで、削除しました。老婆心ながら、それを目にされた方のために、説明申しあげます。
以下、手短に、ネタバレ感想など。
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『東京島』は、中盤は息もつかせぬサバイバル小説なのに、最後が「絵日記風」になるのが残念。
あと、これ、筋とは関係ない疑問として。「双子は細胞分裂して生まれるそうですから…」のとこ。
「チキ」と「チータ」は男女の双子だから、二卵性双生児の筈ですよねえ… むむ。
いやわからん、卵巣の中ではひとつだったいうことで? 細かいこと気にすると、損やね(笑)
『メタボラ』の方は、記憶を思い出してからの主人公がくどい。いや、こんな言い方は失礼だが。
飲み屋で聞いてもいないのに自分の過去を語りだす人みたい?まあ、そいうの、嫌いじゃないけど。
「聞きたくない人は、耳を塞いでくれ」て自分でも言うたはるのが、なんかね。
そういうとこも、いちいち自分とかぶるんだなあ。
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「『この島に欠けているのは、愛なんだ。あなたが皆に愛を与えてくれれば、完璧になる。
そう思わないか』
『愛って何』
ユタカは胸に手を当てた。
『すべての男を愛してやってくれ』」
『東京島』より
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「誰の愛も持ち込むな、愛を発生させるな、愛を堆積させるな、愛を排除しろ。
クリーンルーム四原則ならぬ、僕の四原則だった。
クリーンルームとは、僕自身なのだ。」
『メタボラ』より