異邦人。
- アーティスト: 久保田早紀,山川啓介,萩田光雄,若草恵
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックハウス
- 発売日: 2001/10/11
- メディア: CD
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こっちでした。(ベタ)
- 作者: カミュ,窪田啓作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/07/02
- メディア: 文庫
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常人にはおそらく、人生で最も大事であろう事件が、いきなり、かくもあっさりと、
無機質に述べられてしまうことの不条理。その後淡々と続く主人公の生活。
あの地中海の眩しい太陽と、恋人の、また眩しいばかりの輝き(正直惚れた)。
そこに、なんとも言えぬ物悲しさを感じさせるのは私だけか。
少なくとも、小説中の人は分かってなかったみたいだが。主人公自身を含め。
その、素晴らしい風景の中での淡白さが、あの、後半の最悪な状況の下での
ドロドロした独白と、極めてくっきりした対照を成している気がする。
・・・・
と、普通に論評しても、偉い評論家の先生方にはとても叶わない、か。
打倒サルトル!と息巻くのも一つの手だが、ここは私らしく、私らしいレベルで。
・・・・
何より、訳者が天才だと思う。あれは絶対「ママン」でなければならない。
「母」でも「お母さん」でも「母上」でも、或いは「オカン」でも。
「ママ」でも、あまつさえ「ママ上」でも(ハットリ君?)あってはならないのだ。
あの一行の、この一語のために、一瞬にして読者はこの小説の世界に引き込まれる。
最後のほうで、「私はママンから聞いた父の話を思い出した」とあったところで、
噴き出してしまった。なるほど。さすがに「パパン」にはできなかったわけだ(苦笑)
「パパン」と言っていいのは、「パパン指輪が欲しいン」と強請る婦女子だけだ。
いやそれはいいとして、やはり、この辺に主人公とママンとの、主人公自身でさえ
意識していない深い繋がりめいたものがあったのではないか。だからこそ、主人公は
泣かなかったわけだし、その後の振る舞いをしてしまったのではないか、と。
・・・ いや、小説中のみならず、読者にまで勝手に決められたら、主人公に気の毒か。
あと、この本を読んだ動機は、正直「薄っぺらかったから」である。
どっかのサイトに「新潮文庫100選に『異邦人』と『変身』があることこそ、日本の
読者嫌いを再生産し続けている」という言葉があったが、なるほど至言だと思う。
(「100選」から感想文書きなさい→とりあえずこれ薄いし、これ選んどこ。
→なんやこれわけわからん) うん。はげしく同意する。素人にお勧めできない。
まあ、お前ら素人はフランス文学より、フランス書院でも読んでなさい、ってこった。
それは冗談として、本棚の『異邦人』の隣に、まだ読んでいない『変身』があるのには
我ながら苦笑する。いやあ、これも読まねばならん。
・・・
母の日の次の日に、この本取り上げるのも皮肉だな。なんでこんなことしたんだろ。
まあ、太陽のせいってことにしておいてください。
*****
「マリイは、あなたは私を愛しているか、と尋ねた。それは何の意味もないことだが、
恐らく愛していないと思われる―と私は答えた。」
「日々は名前をなくしていた。私に対して意味を持っているのは、
昨日とか明日とかいう言葉だけだった。」
「私ははじめて、世界の優しい無関心に、心をひらいた。これほど世界を自分に
近いものと感じ、自分の兄弟のように感じると、私は、自分が幸福だったし、
今もなお幸福であることを悟った。」