中島はわしが育てた。

て、某元日本代表監督のような台詞をはいて恐縮だが。
向こうからしたら、オッサン誰?て感じなのだろうが(笑)
西武ライオンズ中島裕之、ほんまいい選手になった。感動である。
兵庫県、伊丹北高校出身。うちの南東、うちの実家の真南にあるこの街は、
空港があること以外これといった特徴のない、何の変哲もない地方都市である。
そして、その普通の街の普通の高校の、普通の人がプロの夢を掴んだのだ。
前の職場で、中島と同級生だった青年がおって、「同じ高校の中島てやつが西武入って、
めっさ注目してるんすよ」と誇らしげに語っていたのは、今でも覚えている。
で、その翌年だったか翌々年だったかの春のオープン戦。甲子園に阪神戦を観に行った。
相手は西武だった。その中島てのが出ていて、おお、あいつかあ、と思い出した。
これがなかなかどうして、守備の動きも軽快だし、おそらく打点もあげたと記憶している。
地元伊丹の友人連中らしい数名が、手製の横断幕や旗指物を持って応援していて、
かなり盛り上げっていた。それをほほえましく思い見ていたのが昨日のことのようだ。
それ以来、ちょこちょこ注目していたのだが。まさか、こんな大選手になるとは。
若手や二軍選手の成長を長年にわたりみてゆく、というオタク中のオタクの楽しみ方を
まさに身をもって教えてくれたのは彼である。二軍オタク・ムーランはまさに
中島によって育てられたと言っても過言ではない(最初と逆やん)。
しかし、ほんま、西武の育成技術には頭が下がる。どうやったら、こんな魅力的な
溌剌とした選手が次々次々と出てくるのか。常々驚嘆するばかりである。
で、今回の日本シリーズであるが。正直、近年になく面白かった。結果は僅かの差で、
西武に軍配が上がったが、ほんまに、最後の最後まで、どっちに転ぶかわからなかった。
勝負のポイントは多々あったのだろうが、ここでは3つほどに絞ってはなしをしたい。
まずは、毎度ながらシリーズ男と逆シリーズ男の出現である。西武は、小笠原とラミレス
にはいいようにやられたが、イ・スンヨプを完全に封じたのは大きかった。ほんまにねえ、
輝く我が名ぞ阪神タイガースにも、そのノウハウを教えてほしいところである。
また、6戦7戦と決勝打を放った平尾の活躍は目覚ましかった。そして嬉しかった。
さすがは元阪神。猛虎魂ここにあり、といった感じだ。と勝手に思ってる虎党は多かろう。
次に、采配も含めた監督の手腕である。ここはこうやろう…と私が考えていたことと、
渡辺監督の行動は悉く一致していて、正直びびるほどだった。一致しなかったケースも
(代打ボカチカなど)結果はいいほうに転び、ほんま、参ったていう感じだった。
一方原監督には、「それはないやろう」と感じることが多かった(岡田監督にはシーズン中
それ以上に感じまくっていたが) 特に、あの、魔の8回はおかしかった。
同点までは仕方ない。しかし、同点にされて動転したのか(うわ)、どうしたん?て感じだった。
同点ならば、残っている投手の顔ぶれと、舞台が東ドであることも考え、まだ巨人のほうが
圧倒的に有利だったはずである。もっとどっしり構えればよかったのではないか。ゆえに、
あの中村の敬遠はない。そして中村の敬遠は、次の野田を抑えることが絶対前提の策である。
その野田に四球を出した時点で、その後も越智に任せるのは荷が重すぎたのではなかろうか。
流れを変える意味で、そして後悔を断つ意味でも、あそこはクルーンしかなかったのでは。
結局クルーンは出せずじまいで終わってしまったわけだし、繰言も言いたくなる。あれ?俺、
巨人応援してたんやっけ?(笑) 岸や涌井を惜しげもなく起用した渡辺監督とは対照を
なす形となってしまった。また渡辺監督は、6戦での岸続投に不満を表した守護神グラマン
7戦の試合前に面談し、しっかりフォローしていたそうである。そのグラマンが胴上げ投手。
フォローもそうだけど、こういう不満をぶつけ合える組織風土も強さの一因だろうか。
最後に、陳腐な言い方だが、勝負にかける執念が、わずか西武が上回っていたのだろうか。
8回の片岡の姿には感涙すらした。死球でガッツポーズもさることながら、最後のゴロゴー。
あれは、一回表の全く同じ局面で自らがしてしまった、中途半端な走塁が伏線となっている。
また同じ場面が回ってくるのも神のいたずらを感じたが。あの走塁は見事だ。球史に残ると言える。
必死にボールを見極め平尾に繋いだ野田といい、全員が必死でひとつのものを目指す。
野球の原点がそこにはあった。あまりこういう言い方はしたくないが(結構しているが)、
7戦の西武のスタメン9人の年俸総額は5億5千万円。イ・スンヨプ一人の6億に満たない。
全員一丸となって努力すれば、巨大戦力にも勝てる。一般社会にも示唆を与えているではないか。
そして、朝7時からのモーニング特打をシーズン中も続けた努力。練習は嘘をつかないのである。
そんな西武が勝った。いろいろ問題はあれ、野球の神は日本野球をまだ見放してはいないと感じた。
最後になるが、もちろん、ドラマは強大な敵役がいるからこそ面白い。その意味で、今年の巨人
もまた素晴らしい戦いをしたと言える。これからどうするのか注目である。反省して育成にいくか。
はたまた、もひとつなりふり構わなくなるか。はたで見ている分には面白い。
そして、輝く我が名ぞ阪神タイガースよ。これを見てお前はどっちに行くのか。どっちにしても。
少なくとも、12球団で一番ぬるいといわれるキャンプをしているようでは、栄冠はほど遠いぞ。
しかし、西武の選手のような、若いピチピチした子が(死語)、おらんからのう…