WBCその6「with野球の底力」。

おもむろに題名などつけちゃったりしてしまったが。WBCプエルトリコ・ラウンド観戦。
おお、発音はプエルト「リ」コですね。アクセントが肝心だ。その昔、優秀な
スペイン語の研究者をつかまえて、素人のくせに臆面もなく訂正をかましたのを思い出したぞ。
(日本ではプエル「ト」リコやねん!とお叱りをうけたのも、またなつかし、と話はヨレ)
オランダ―ドミニカ第二戦、しびれたぜ。私が今までに観た数千もの野球試合のうち
何本指かに入る名勝負だった(またか)。これぞ野球の怖さ。これぞ野球の面白さ。
大エース、ペドロ・マルチネスに挑むオランダ無名選手たち、という図の序盤は、
まさに手も足も出ない形で、だめだこりゃー(長助)、と思って観てはいたが。
野球はディフェンスである。しっかり守っていれば何かが起こる。延々続くゼロ行進。
陳腐な言葉しか思いつけないのがもどかしいが、ひたむきにボールに食らいつく姿には感動した。
延長11回オモテ、オランダのライトがボールを反らし、ついにドミニカに先制点が入った。
その時私は、遠い昔の高校野球のPL―都城都城商都城農?すみませんオボロゲ)の
シーンを思い出した。まあ、よくやったよ。ライトよ自分を責めるな、と温かいものがこみあげ。
それもドラマだがウラにまたどえらいドラマが待っていた。ドミニカのリリーフエースを粘って攻め、
つないでつないで、ついにそのライトに打順が回ってくる。野球マンガにしてもできすぎなシナリオ。
「打って返す!」ライト君の意地と、みんなの気持ちが乗り移ったボールは、ライト前にぽとりと落ちた。
同点の瞬間、私の鼻から噴出したのは、鼻水なのか涙なのか、それはわからない。
まさかの同点劇に、ドミニカは完全に浮き足立ち、あれよあれよとそのままサヨナラ。奇跡は二度起こった。
いや、奇跡とはもはやいいがたい。同点であるのに、まるで負けたかのような慌てぶりのドミニカ。
あの牽制はなかった。また、低めに集めるオランダ投手の投球を何度も何度も打ち上げる工夫のない攻撃陣。
奇跡は起こるべくして起こったのか、今となっては思う。さすがは国際試合。ひと時の油断も許されない。
偉大にして慈愛溢れるわがランダル=サイモンさまは、11回裏二死三塁のチャンスに、敬遠。おお敬遠。
なんたる風格。そして、一塁上から三塁走者にさかんに合図を送る。延長11回裏二死一・三塁。
ここは伝説の「サヨナラディレードスチール」ができるなあ、サイモンさまもそれを考えてらっしゃるか。
いつサインを出そうか…(何でよ) 行け、行けと必死でテレパシーを送ったが、その前に打者が打っちまい。
しかし、サイモンさまの進塁で一塁の守備位置が変わったことが、次打者のサヨナラ打に繋がったに相違ない。
まさにMVP級のご活躍。今後も注目できるのが嬉しい限り。WBC事務局はこの展開、涙目なんだろうが。
私はすっかりオランダファンになった。宣言したい。本国の人たちもこの頑張りを応援してほしいなあ。是非。
で、国際映像見てて面白いな、と思ったのが。選手紹介で、選手本来の所属チームのデーターを示す時、
例えば日本では、「ダルビッシュ日本ハムでの去年の成績」と言うような時、映像のテロップでは、
「Last Season with the Chicago Cubs.」と表現していたことだ。ほう、inでもforでもなくwithなんや。
うまくは説明できんのやけど、なんか感動した。ただの印象なんで、合ってるかわからんが(おい先生)
withて、チームと個人が対等で、ほんまにともに闘っている気がする。なんか素敵な感じがした。
こういう組織が、これからやはり強くなっていくんやろな。丁度今日のオランダにそれを感じた。
オランダ一丸の「with野球」が、名選手がチームにいるだけの「in野球」に勝った。何か象徴的ではないか。
一方我が東洋は、ウチにしろオトナリにしろ、どうも「for野球」みたいな感じがして。
それもそれで盛り上がるんかもしれないが、どうも肩が凝ってしまうのが欠点か。楽しさ、という点ではどうか。
この仁義なき前置詞合戦、はたしてどこに軍配が上がるのか。今後とも見守ってゆきたい。
これは野球に限らず。国際組織文化比較論の一環として(大袈裟)
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<本日の言葉>
「青葉のナインとはからだつきからしてちがうんだ。二倍も三倍もやらないとまけちゃうよ」

                    谷口 タカオ 『キャプテン』より

           オランダは最初から勝つつもりだったんだろう、と思ってしまった。
           しかしそれ以前に、からだつきはいいな。オランダやイタリアなど、
           身体能力の高い素人国に、野球学校をつくって人材を日本に送る、
           というのもモデルとしてはあるかもなあ。