『阪神タイガース 暗黒時代再び』。

阪神タイガース暗黒時代再び (宝島社新書)

阪神タイガース暗黒時代再び (宝島社新書)

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わざわざ偉そうに言わんでも、わかるわい…、と本屋で見つけた時は苦笑しきり。
また、ここぞとばかり、ちょこちょこ稼ぎはるなあ、と半ば呆れもしてしまった。
が、ずっとスルーしていたのが、つい先日の外出時、無意識的に購入してしまった。
これぞノムさんの思う壺ではないか… 隣のヨメを差し置いて、行き帰りの電車内で、
脇目も振らず一気に読了。なんで悪口言われてるのわかってるのに、わざわざ読むのん?
理解できひん。マゾちがう?とこき下ろされるが、その声がまた、自分をこの手の書に
向かわせるのではないか。マゾちがう?どころではない。立派なマゾである(威張るな)
ただ、あまり新しい情報はなかった(おい)。これは多分に私がオタクだからであろう。
その中でも、具体的な事例の分析から浮き彫りとなる阪神球団や選手の問題点。
巨人・中日等の強豪、あるいは日本ハム・西武等育成を得意とする球団との比較。
自身が身をもって体験した、阪神をとりまく各利害集団にはびこる病理。
あと山田勝彦氏へのベタ褒め。自分は「久慈・山田・投手」のセットで捉えるのみだったが…
そういった記述は面白く参考になった。が、いつもこの手の本を読むと思うんやけど。
それ以前に、野球解説者の言葉を聞くたび思うんやけど。ほんまにそう思うんやったら、
本人はじめ当事者に言ってくれよ、と。そうできへん立場にいるということなんだろか。
はたまた、実際言ってるのだが、言ってても全然耳を貸さない、ということなんだろか。
新井選手など、本書を読むほうが、護摩行だかをやるよりよっぽど効果があると思うが。
失礼、これは言葉が過ぎたかもしれない。愛ゆえに、とご容赦。
本書の具体的内容については、本書に譲るとして、この際なので、阪神について今
自分なりに思ってるとこを述べることとする。ひとことでまとめると、
「どうしたいねん」
ということである。
去年暮れ、「育成の日本ハム」として大成功をおさめられた、日本ハムの元球団社長の方が
ラジオに出演されていた。この方は野球とは全く関係ない人で、野球に関係ない世界にいたが
縁あってまず、サッカーのセレッソ大阪(ここも日本ハムが噛む)を任されたのだとか。
不勉強が恥ずかしい限りだが、なるほど、と思った。まだタイトルはとっていないとはいえ、
大久保選手から香川選手、乾選手、清武選手に至り、それに扇原選手や山口選手が続くであろう、
そいう、有望選手がポンポンでてくるシステムをセレッソは創り上げた。それがその方であると。
実績を買われてプロ野球の日本ハムに移り、そこでの成功については言を待たない。
氏の発言内容は非常に興味深く、いちいち頷くばかりであった。そこには哲学があった。
で、関西のラジオゆえ、どうしても話は阪神のことに触れざるを得ないが、言われてましたよ。
「失礼ながら、どこを目指されているのか、と思います」
「なぜ今、西岡、かな?と」
・・・
大金で選手を集める時代はもう古い。日本ハムや西武はもちろん、あの巨人でさえ(失礼だが)
見事に育成型にチームを切り替えた。それを福留だの西岡だのの大補強。時代に全く逆行している。
それでも彼らが打ったら打ったで喜んでしまう自分もいる。その辺は凄く複雑な心境だ。
その古さを打破するには、新しい風を組織に入れる必要がある。本書にもあったが、巨人では
野球関係者ではなかった幹部が率先して組織改革を行った結果が今につながっている。
また、自分は救いようのない野球オタクなので、プロ野球選手名鑑を熟読しているのであるが、
今年度については知らないが、少なくとも昨年度の巨人や中日には、「プロ野球経験なし」
のコーチが結構交じっていた。心身を含めたトレーニング中心にそうした人材が配されてる。
想像するに、最先端のスポーツ科学・心理学を駆使して、包括的に選手をみているのであろう。
反面阪神は、見たことのあるような名前の人が代わり映えなくやっている。特にトレーニングに
関しては、自分の物心ついたウン十年前から担当者はずっとずーっとずーーと、かわっていない。
同じであること自体を悪いとは言わないが、少なくとも実績が出ていないわけだから、
なんだかの対策の取りようはあるだろう。ま、その辺から既に強豪とは差がつきまくっている。
先ほどの「どうしたいねん」ということに話を戻すと、たぶんわかるよ。きつい言い方だが。
組織内のみんなが、あるいは利害関係者全員が、穏便に、何事もなく、平穏に…ではないかな?
でも、これも失礼ながら、何かとユルかったH神単独経営時代(今更伏せても全く意味なし)と
違って、H急と合わさった今は事情が違うで。何もせんでも客が入ってたこの十年は何事も
なかったかもしれんけど、H急さんはシビアやで。儲からんとわかったら簡単に切りよるで。
H急はじめかつて関西にいくつもあった名門球団と同じ道を、もし阪神(実名に戻す)が
たどってしまったとしたら、これほど残念なことはない。是非とも球団にかかわる人々は、
しっかり「哲学」を持ちつつ、状況を長く広く見据え、他人の言に耳を貸し、頑張って頂きたい。
しかし「パンドラの箱」とはよく言ったもので。
このどうしようもない状況が噴出している中、藤浪・北條という「希望」が出てしまった。
将来のエースと四番が一気に入ったで、と浮かれている自分をどうにも抑えられない。
こうして虎党虎党であり続けてしまうわけよ。
今年も騙されたと思って、キャンプを楽しみにしている自分がいる。誰か助けて。
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<本日の言葉>
「これまでと同じ思想の下では、いくらポストを新設したところで、責任を取らない人間が
増えていくばかりだ。中村GMがしっかりとした『阪神タイガースとは』『阪神野球とは』
という思想を定め、それに従って監督、コーチ、選手の編成を、予算に応じて適切に行い、
失敗すればその責任を負う。その信念を固めなければ、阪神は今後も同じ失敗を繰り返し続ける。」
                             (本書より)