『10000人の第9』2012。



というわけで、本番、歌って参りました。ご報告が遅れて申し訳ないです。
3回目の今回は、いい意味で「慣れ」も出てきたというか、余裕をもって臨めた。
恒例である当日の「自己愛弁当作り」も、前日から仕込みをするなど準備万端であった。
本番自体は2時間前後。自分らの出番は『第九』では15分。第一部の企画を含めても
30分あるのだろうか。ただそれがために、前日リハーサルから当日の「席決め」から、
当日リハーサルからしめて、ゆうに12時間以上、えんえんと拘束されるのである。
今までは、義父に声かけに行くくらいで、あとはひとり読書や歌の復習などしていたが。
今回は、周りが見えてきたのだろうのか、左右二つ隣の人まで、楽しく話ができた。
これは右隣の人が本当に気さくだったこともある。ああいう簡単に"break the ice"が
できる人てのは本当にありがたいし、あれも本当に大事な能力なんだろうな、と見習うものだ。

右二つ隣の老紳士は、御年八十歳にしての初参加。京都の山奥から(ご本人の言葉である)、
毎週頑張って出てこられたということで。当日も朝まだ暗い中起きて来られたということだ。
「この歳で、初めてなんで、恥ずかしい限りですが…」と繰り返されてたが。素晴らしいよ!

右隣の、前述のフレンドリーな壮年は、大体自分と同じ年くらいだろうか。義理のお母さまが
どうしても一度出て歌いたい、ということで、奥様とお子様とご本人と合わせ一緒に申込み、
めでたく全員当選された、と。オペラグラスを使って、対面のアルト席を必死に探してらした、
それが本当に微笑ましかった。「ああ娘いました!あそこ右側!」と嬉しそうに語ってらした。
「そういえば、あそこポコンとひとつ背が低いですね」と自分も喜びを共有できたのが嬉しい。

左二つ隣の方は、かなりベテランと見えて、いろいろな過去の裏話を教えて頂き、興味深かった。
「たぶんサプライズでこうなる」とその方が予言されていたのが、ズバリ当たって、びっくり!
それは具体的には今は明かせませんのですよ。是非24日のオンエアでご覧くださいねー(うざっ)
その方は、今年のレッスンを申し込まれてから九州に単身赴任になり、それにもかかわらず、
毎週飛行機で帰阪されて続けられたのだとか。ご帰宅も兼ねてのことだろうが、凄すぎる。
「ピーチさまさまだよー!」とおっしゃっていた。関空から大阪まで毎週、だけでも大変だよ。

左隣の青年は、実はレッスンの時から気になっていた。十余年前、自分が前の職場で働いていた、
その時に一緒だった青年と非常によく似ていたのである。ひょっとして?と毎週毎週思っていたが、
勇気がなくて声をかけなかったのだ。前日リハーサルで隣になった時は本当にびっくりした。
こんな偶然ってあるんだ。十余年ぶりの再会。神様も素敵な悪戯を、と思いつつ、心臓はバクバク。
でもやはり最初はよう声かけなかったが、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥!ええいままよ!と、
「すみません間違ってたらごめんなさい。もしかして○○さんではありませんか?」
青年は「いや、違います」と(ずこっ)。でも彼のおかげで前の職場時代の思い出を十分味わえた。
きっかけは変だったが、その青年ともそれからいろいろ話ができた。だから、プラスの勘違い、だ。
たまたま職場にビラがあったのを去年申し込んだらたまたま当たって、それからハマってしまった、と。
失礼ながら大阪城というよりショットバーが似合いそうなイケメソ。こんな人まで、第九は虜にする。

一万人いれば一万とおりのストーリーがある。
その数多のストーリーが、佐渡裕のタクトに導かれ、歓喜の一点へと昇華される。
これぞ、『10000人の第九』の醍醐味であり、意義なんではないだろうか?
これぞ、私の求めていた、「歓喜とは?」という問いの答えなのではないだろうか?
リハーサルでは、そういった思いが去来し、途中から涙がこぼれてきて歌うのが難しかった。
本番ではこりゃどれほどの感動があるんだろうかと。その感動に自分は耐えられるんだろうか、と。
不安にかられ本番を迎えた。しかし本番では、フーガくらいから、これはちゃうやろ、と思い始め、
最後のプレスティッシモのへんになると、めっさ冷静に分析する自分になってしまってた。
もっとやれたはず。まだやれるはず。こんなんではあかん。また出直しや。快哉を叫ぶ周囲を他所に、
ひとり覚めてリベンジを誓っていた。なぜだかわからんが。贅沢な話やねんけど。ほんま欲深いことや。
もっとも、最後に涙が出なかったのは、第一部で涙が出尽くしたから、という話もある。
それでも蛍の光が終わって、お隣四人と握手をかわすと、じわじわこみ上げるものがあった。
まあ、爆発的な歓喜歓喜だが、こいうしみじみじわじわ、なのも歓喜なんではないかな。
帰りの道すがら、義父に「冷静分析」の話をしたら笑われた。
「ええ感じにハマってきたな」
ハメたんあんたやん、というツッコミはさておき。ええ、もう逃げられなさそうです。
ちなみに四人へのアンケートでは「リベンジ率」は100%でした。
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<本日の言葉>
「明日へ向かうほど、近くなる昨日がある」
              森山 良子『家族写真』より


ほんと、この言葉の意味をしみじみと感じている、今日この頃であるよ。
もう少し深くお知りになりたい方は、是非24日(地上波)と29日(BS)のオンエアでどうぞ(うざっ)