失われた信頼/漁夫の利。

概ね元気であったうちの子たちではあるが、夏の疲れも出たのであろうか。
少し問題が出てきた。アントニオ(茶トラ)は耳に謎のイボイボが出来てしまって。
かゆいらしくひっきりなしに掻く。そうこうするうち、耳に血が滲んでしまう状態までに。
ネット等で調べると、「耳丘疹」というものらしく、日光過敏症か蚊アレルギーが原因、
ということらしい。蚊には細心の注意を払っているが… 日向ぼっこ大好き君であるので、
前者の可能性が高そうであるが…
一方ホセ(ちょび髭)には、少し以前から歯茎の腫れがあって、歯周病を疑っている。
心なしか、エサを食べる速度が遅くなり、横からポロポロこぼすことも多くなっている。
というわけで、あまり気が進まないのだが、ダブルで病院に連れて行くこととなった。
アントニオは、「飛んで火にいる夏の虫」とばかりにケージに自ら入ってくれたが、
ホセは入ってくれず、派手な大立ち回りを演じるハメとなった。そないに怒らんでも…
仕方がないので、ケージに入れるのは断念し、洗濯ネットで捕らえ抱えて持って行った。
「無礼者!何をいたす!貴様らただでおかないである!」と車内でも猛抗議。とほほ。
行きつけの獣医さんは、外観内装とも瀟洒で落ち着いた雰囲気で、よさ気だったので
お世話になっているのであるが、気になる点が二つあった。ひとつは、そこの先生は、
いい人だが、超不器用であること。もうひとつは、いつ行っても患者さんがいないことだ。
どうしようか、獣医さんを変ろうか、とは行くたびに話しているのであるが、
またイチから検査とか説明とかするのも面倒くさいのと、そこの先生に情が移ってしまったのとで、
なかなか踏み切れないでいる。でもどうなんかなあ、と今回改めて思った。
アントニオに関しては、疥癬の可能性ということで、虫下しを投与された。でも寄生虫やったら
他の箇所にも出てるんちゃうかなあ?と素朴に思った。そして日光過敏症その他の話は出ず。
こういう時、自分の考えを述べた方がええんかなあ。これは自分が人間の医者にかかった時も
同様に悩むものであるが。根が弱気なのでなかなか言い出せない。今回も黙ってしまった。
一方ホセは、歯茎の腫れよりむしろ、口奥の口内炎が気になりますね、という指摘。
方法は三つあります。まずは歯を抜いてしまうのが根本的な治療です。或いは強力な注射をするか。
または今回は弱い注射にとどめ、炎症止めと抗生剤の服用でサポートするか。どうされますか、と。
歯を抜く?という提案には血の気がひいた。口内炎は治るんかもしれんけど、他で体のバランスが
大幅に狂うんちゃうかな?また、強い注射というのも不安が残る。脳内で瞬時に比較検討した。
じゃ、三番目で、と答えた。お薬は飲めますか?と質問されたが、この時点では深く考えてなかった。
やったことはないですけど、たぶんいけるでしょう、と答えた。それはとんでもなく甘かったわけだが。
で、表題の「失われた信頼」なのであるが、これは獣医さんに対して言っているのではないのだ、実は。
いやほんま、ホセが薬を飲まんのだ。まずは普通にエサに薬をそのまま入れたのだが、
芸術的に薬だけ避けて食べられてしまう。次に、細かく薬を砕いてエサに混ぜたが、「何を混ぜた」
と不審に匂いを嗅ぎ、頑として口をつけない。新しいエサや猫草を差し出すと、貪り始めるのだが、
さり気なく途中で「薬入り」にすり替えると、瞬時に気付き途端に口を止める。もーーーーー!
賢いんかアホなんかよくわからん。こんなに君のためにやってるのに!とイライラしてくる。
いかんことなのだが、頭に血が上り、ふんじばって口の横から入れて飲みこませようとすると、
(ネットとかでは、それもひとつの方法、と書いてあったので…) 聞いたことのないような
恐ろしい叫び声を発し、挙句に「ぺっ」と薬を吐きだす始末。すっかり信用を失ってしまったのか、
それからしばらくホセは心を閉ざしてしまった。ガンジーか鑑真かいうくらいのハンストに突入。

機嫌を取り戻すのに二日ほど苦労したよ。とほほのほ、である。
やっと自分らに再び近づいてくれるようになり、エサも食べてくれるようになったところで、
普段はやらないのだが、手から直にエサを与えて甘やかした。そうして気を許したところで、
手の中にそおっと薬をまぜると、わしわしっとそのまま食べた。ふふふ。作戦成功。爽快だった。
ところが、それも何回かやってるとばれてしまい、また心を閉ざされた。ザ・いたちごっこであるな。
というわけで、投薬に関しては半ば匙を投げている。強力注射かなあ。
でもまたホセとバトルの後、洗濯ネットかなあ、とげんなりしている。

予はいつでも相手になるである!
アントニオは、天然なので、薬もぺろりとたいらげてくれ、症状もやわらいできた。
もっともこれは、日光が和らいできたからかもしれない。真相はわからない。
そうそう、アントニオと言えば、もうひとつ。
ホセに薬をやろうと悪あがきをしていた一環として、「半練りのエサで薬をコーティングする作戦」を
トライしていた時である(もちろん失敗)。その半練りエサがカツオ系(いわゆる節(ブシ)系)で。
カツオ大大大好きなアントニオが、ぎゃあぎゃあ騒いで困った。ホセは薬を飲まず、アントンは騒ぐ。
まさに前門の虎、後門の狼。ヤケクソになって、アントニオに殆ど半練りエサをやってしまった。
だから、今回のバトル、結果は「アントニオの一人勝ち」なのかもしれない。おおそうか。

関西随一、節(ブシ)系ネコ。てラーメンかよ。
おっと、しかし本当の鰹節をやってはいけないのだ。