『幸せの教室』。

幸せの教室 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

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行きつけの近所の映画館で、遅れ馳せながら観てきた。
トム・ハンクスジュリア・ロバーツ、両大物の熱演!
学歴を理由に職を追われた中年男性が、一念発起し学びの場へ。
今までの人生で全く「学び」とは縁遠かった彼ではあるが、
キャンパスでの様々な出会いと交流を通じ、「魂の成長」を遂げてゆく。
初めて「学びの意味」を知った主人公に課せられる、感動の「卒業試験」…
ひとりの男の、人生を変えた授業…
というのが、観る前に自分の頭にあったイメージである。予告編もこんな感じだった。
また、封切られた直後に、ラジオでえらい褒めてはった時も、これ系の話をしていた。
で。観終わった後の率直な感想としては。
思わず涙が出ましたよ。
…おかしくって、であるがね(笑)。ツボに入ってしまい、笑い死にしそうになった。
一方一緒に観たヨメの感想は、「あなたがウケてるのを観るのが一番面白かったわ。
怒って席蹴らないかとヒヤヒヤしてたけど…」ということです、ハイ。
いやまあ、自分はアリだと思うよ。真面目に感動を求めていた人は、腹立つかもしれんが、
ギャグ映画と思って、楽しくツッコミながら観る分には、充実の内容、という感じだ。
悔しいが『幸せ』な気分になってしまった。それこそ、トムの思う壺だろうか。
それでは、具体的にどいうツッコミどこがあったか、以下で説明いたします。
ネタバレを含みますので、ずずいっと下がります。



















ごめんなさい、辛口になってしまいますが、愛ある批評と解して下さい。
正直思ったのは、トム&ジュリア、仕事選べよー、ということである。
このレベルの映画に出ててはあかんでー。困ってるんか大人の事情か、と勘繰ってしまう。
悲し面白かった。ジュリアは酒に溺れる大学講師役を演じているのであるが、それこそ
酔っ払って作ったのではないか、という脚本であり映画である気がした。
なんでトムは、この脚本・演出を許したんか、これで出るつもりになったのかと思ってたら、
なんとトム自身が監督・脚本ということでしたか。それなら仕方ない。納得した。
まず、何故主人公が大学で学ぶに至ったかという経緯描写が新井もとい粗い。学歴でネチネチ
苛められてるシーンにはそれなりに共感を覚えたが、ちょちょっと就活してうまくいかなかった
からちょちょっと大学入った感じで、覚悟が感じられない。て俺は人のことを言えるのか。
女子学生(魅力的!)との交流だが、勘違いして自分も大学に戻ろうかとも一瞬思ったが。
うらぶれた中年をあんなに甲斐甲斐しく世話する女学生がおそらくいるはずはないだろう。
中年のオッサンの妄想のようで、自戒も込めて、少々板井もといイタい(しつこいぞ)。
ジュリアの夫はいい味出していて、それだけでも一見の価値ありだが、大学教師のヨメを外で
働かしている間、家でお前何してんねんという姿は、何かとかぶってしまい、それも痛切だ。
その他、これは何がいいたいねん、何の意味があんねん、というシーンが延々と続き、
怒りを通り越して笑えてくる。あ、大学生活てそんなもんすか。その象徴としてはよくできてるか。
中盤で、主人公が学んだ理論を活かして銀行に乗り込むシーンがあった。そこではおお!、と思う。
今までは前フリやな?ここから真の闘いが始まるんやな?と期待感が高まるが。闘いは始まらない。
おいおい!どこ行くねんこの話! これどうまとめるんか、見届けてやるという意地のみで見続け。
ラストのスピーチは、そこだけとればホロっとくるが、主人公はあまりにも突然に成長する。
その成長過程はやはり全く描かれていない。スライムを一匹倒したらすぐレベル1が50になった、
という感じで、驚きである。でも、そこで終わっていたらまだマシだったような気もするが。
そっからの「消化試合」が本当に蛇足。最後はまた唐突に水戸黄門の印籠級のハグ&チュー。
でおしまい。結局そこもっていきますか。結局チューですか。魂の成長は? 学びの意味は?
と、散々ぱら言っといて何だが、見所もある。
まずは前述のジュリアの夫。「魂の叫び」が秀逸だ。
また隣人の黒人がいい味出している。彼が言ってた「Manifest Destiny」てのは究極の皮肉だと
思うんだが、字幕ではスルーされていた。自分の考えすぎか勘違いかかなあ。
あとキーワードは「醤油」ですな。これだけでも、エンドロールまで観る価値あり、だ。
最後に、もしあなたが『スター・トレック』のファンならば、この映画は二百倍楽しめる。
自分の「笑い死にポイント」もそこだった。トムと『スター・トレック』の関わりについては
寡聞にして知らないが、興味のあるところである。
以上長々と申しわけありませんでしたが、これだけ書けるくらい楽しめた、ということで、
映画代分くらいは元とった気がする。人生が変わったかというと、どうだかはわからん。
この映画を、自分の人生にプラスにするも、この映画をどう解釈できるかという、
自分の人間性次第かもしれない。そう思うと、だいぶ凹んでくる。
<本日の言葉>
「愚か者の脳は、哲学を愚行と、科学を伝説と、そして芸術を衒術と理解する。
 故に大学教育がある。」
                ジョージ・バーナード・ショウ



ラストのスピーチ中にある言葉。この映画の全ては、この言葉にある。
映画を観れば二時間かかる。この言葉を言えば十秒で済むだろう
つか、そうか。愚か者の脳には分からない高尚なメッセージが、
この映画には実はあったのかもしれない。そうだとすると、深い。