『マネー・ボール』。

【映画ポスター】マネーボール (ブラッドピット) /DS

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

映画自体は一週間前に観てきた。それがきっかけで一念発起し、
長年やらずにいた「宿題」である、原作本を読了した。
00年代前半に大リーグ界を揺るがした、オークランドアスレティックスの旋風。
その背骨をなす所謂「マネー・ボール理論」と実践者であるビリー・ビーンGMが主人公だ。
自分的には、一度オークランドを訪れたことがあり、見知った風景がいっぱい出てきて、
また格別の楽しみがあった。(参考:http://d.hatena.ne.jp/Moulin/20080908
主役を演じるブラッド・ピットはかっこよかった。しかしどうしてもかっこ良すぎるな。
ブラピはどうしても永遠にブラピなのである。それが二枚目の宿命であろう。
その点、キムタクはどうしてもキムタクであるのと同様である。『南極大陸』観てて痛感した。
なんかもう、あまりにせつないというか、いたたまれなくなって、観るのをやめてもたけど。
つうかあれ、いまいち流行ってないらしいすね。めっさカネかかってるというが、大丈夫やろか。
いや、そんな話がしたかったのではなかった。
そこへいくとこの『マネー・ボール』では、少ないカネでいかに結果を出すかが追求されている。
そのためには、資料を客観的に、かつ新しい視点で徹底分析し、誰も気づいていない「価値」を見つける。
その「価値」を求め得るために、旧弊を打破し、組織風土を根底から変え… とこれは野球にとどまらず、
一級のビジネス・モデル足り得るのではないか。(というほどにビジネスを知ってるわけではないが)
また、新たな「価値」を「発見」されることで、闇の中からスポットをあてられることとなった群像…
一人一人は弱いその群像が束になり、強者を倒す戦術とプロセス、そのサクセス・ストーリー… 
そして何よりも、過去の自分と現在の自分。その中の「光と闇」と向き合う主人公の闘い…
そういうヒューマン・ドラマの集積とも言える。野球ファン以外の方にも是非お勧めしたいところだ。
・・・・
と言いたいところだが、正直、お勧めできるかはわからない(どっちやねん)
いやこれ、自分は野球オタク、しかも大リーグ・オタクやから、どうしてもその縛りがある。
ああストロベリーや、おおジャスティスや、というだけで嬉しくなってしまうのであるから。
全く知らない人が接した時にどう思うかは、想像だにできないんであるよ。というわけで。
全然興味ない人こそ観て下さい。読んで下さい。そしてどう思ったかを私に教えて下さい。
て、この逃げ方、何回も使ったことあるな。


以下は、いつものネタバレ感想というか、ここまでで抑えていたオタクモード全開感想である。
野球興味無い方は、お進みにならないことを強くお勧めします。







映画では、元阪神シェーン・スペンサーの、ヤンキース時代の映像がいきなり出てくるので笑ってしまう。
一方、原作本では、マット・キーオ、ダネール・コールズ、ケビン・マース、マーク・ジョンソンという
名前も出てくる。キーオ氏以外には確信が持てないが、おそらく「本人」である可能性が高い。
阪神ファンには、そのへんもおいしいところだ。ちなみに元巨人ジョン損や元中日モッカも出てくるでよ。
肝心の「マネー・ボール理論」であるが、打の方では、打率・打点・本塁打という従来の評価基準を見直し、
出塁率長打率、特に四球数を重視する。この点、調べると今季のセリーグにおいて、中日やヤクルトは、
打率はさほどでもないが(一位は阪神(!))、四球数は他の四球団に比べ、段違いに多い。なるほど。
また、走の方では、犠打は単なるアウトの無駄遣いとみなし、不確実性の高い盗塁も忌み嫌っている。
自分にとって同意しかねるのと同時に驚きだったのは、守備力の軽視。これはどうなんかな。
ただ、一昔前は結果を出していたア軍も、最近は伸び悩んでいて、守りと足重視に揺り戻ってきているらしい。
そこへもってきて、何故今頃になっての映画化?とも思うわけであるが。何か大人の事情でもあるのか。
あるいは単に、構想してた時は強かったが、映画作っている間に弱くなった、というところか。
ともあれ、この「マネー・ボール」、野球オタクの夢の集積であり、野球データオタクにスポットがあたった
唯一無二の機会であることは間違いない。自分は、伝説のGMのビリー・ビーンはとても目指せそうもないが、
伝説の野球オタクのビル・ジェイムスには努力すればなれるかもしれない。て何を努力すればいいのだ。



<本日の言葉>
「わたしは、他の統計データには興味がない。株式の値動き、降水確率、犯罪率、国民総生産、
雑誌の発行部数、フットボール・ファンの識字率の上下動 ―いまだかつて何ひとつ気にならない。
月々3.69ドル払って養子にしないと2050年までにどれほど多くの孤児が餓死するか、
そういうことにもそそられない。わたしの関心事は、野球だけ。いったいなぜだろう?
それは、ほかの分野の数字と違って、野球のデータには言葉と同じ力があるからだ」
                        ビル・ジェイムス『野球抄1985』より


氏によると「守備に関するデータは、数字としては存在意義があっても、言語としては意味がない」
のだそうだ。