『マネー・ボール』。
- 作者: マイケル・ルイス,中山宥
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2006/03/02
- メディア: 文庫
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長年やらずにいた「宿題」である、原作本を読了した。
00年代前半に大リーグ界を揺るがした、オークランド・アスレティックスの旋風。
その背骨をなす所謂「マネー・ボール理論」と実践者であるビリー・ビーンGMが主人公だ。
自分的には、一度オークランドを訪れたことがあり、見知った風景がいっぱい出てきて、
また格別の楽しみがあった。(参考:http://d.hatena.ne.jp/Moulin/20080908)
主役を演じるブラッド・ピットはかっこよかった。しかしどうしてもかっこ良すぎるな。
ブラピはどうしても永遠にブラピなのである。それが二枚目の宿命であろう。
その点、キムタクはどうしてもキムタクであるのと同様である。『南極大陸』観てて痛感した。
なんかもう、あまりにせつないというか、いたたまれなくなって、観るのをやめてもたけど。
つうかあれ、いまいち流行ってないらしいすね。めっさカネかかってるというが、大丈夫やろか。
いや、そんな話がしたかったのではなかった。
そこへいくとこの『マネー・ボール』では、少ないカネでいかに結果を出すかが追求されている。
そのためには、資料を客観的に、かつ新しい視点で徹底分析し、誰も気づいていない「価値」を見つける。
その「価値」を求め得るために、旧弊を打破し、組織風土を根底から変え… とこれは野球にとどまらず、
一級のビジネス・モデル足り得るのではないか。(というほどにビジネスを知ってるわけではないが)
また、新たな「価値」を「発見」されることで、闇の中からスポットをあてられることとなった群像…
一人一人は弱いその群像が束になり、強者を倒す戦術とプロセス、そのサクセス・ストーリー…
そして何よりも、過去の自分と現在の自分。その中の「光と闇」と向き合う主人公の闘い…
そういうヒューマン・ドラマの集積とも言える。野球ファン以外の方にも是非お勧めしたいところだ。
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と言いたいところだが、正直、お勧めできるかはわからない(どっちやねん)
いやこれ、自分は野球オタク、しかも大リーグ・オタクやから、どうしてもその縛りがある。
ああストロベリーや、おおジャスティスや、というだけで嬉しくなってしまうのであるから。
全く知らない人が接した時にどう思うかは、想像だにできないんであるよ。というわけで。
全然興味ない人こそ観て下さい。読んで下さい。そしてどう思ったかを私に教えて下さい。
て、この逃げ方、何回も使ったことあるな。
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以下は、いつものネタバレ感想というか、ここまでで抑えていたオタクモード全開感想である。
野球興味無い方は、お進みにならないことを強くお勧めします。
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映画では、元阪神シェーン・スペンサーの、ヤンキース時代の映像がいきなり出てくるので笑ってしまう。
一方、原作本では、マット・キーオ、ダネール・コールズ、ケビン・マース、マーク・ジョンソンという
名前も出てくる。キーオ氏以外には確信が持てないが、おそらく「本人」である可能性が高い。
阪神ファンには、そのへんもおいしいところだ。ちなみに元巨人ジョン損や元中日モッカも出てくるでよ。
肝心の「マネー・ボール理論」であるが、打の方では、打率・打点・本塁打という従来の評価基準を見直し、
出塁率と長打率、特に四球数を重視する。この点、調べると今季のセリーグにおいて、中日やヤクルトは、
打率はさほどでもないが(一位は阪神(!))、四球数は他の四球団に比べ、段違いに多い。なるほど。
また、走の方では、犠打は単なるアウトの無駄遣いとみなし、不確実性の高い盗塁も忌み嫌っている。
自分にとって同意しかねるのと同時に驚きだったのは、守備力の軽視。これはどうなんかな。
ただ、一昔前は結果を出していたア軍も、最近は伸び悩んでいて、守りと足重視に揺り戻ってきているらしい。
そこへもってきて、何故今頃になっての映画化?とも思うわけであるが。何か大人の事情でもあるのか。
あるいは単に、構想してた時は強かったが、映画作っている間に弱くなった、というところか。
ともあれ、この「マネー・ボール」、野球オタクの夢の集積であり、野球データオタクにスポットがあたった
唯一無二の機会であることは間違いない。自分は、伝説のGMのビリー・ビーンはとても目指せそうもないが、
伝説の野球オタクのビル・ジェイムスには努力すればなれるかもしれない。て何を努力すればいいのだ。
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<本日の言葉>
「わたしは、他の統計データには興味がない。株式の値動き、降水確率、犯罪率、国民総生産、
雑誌の発行部数、フットボール・ファンの識字率の上下動 ―いまだかつて何ひとつ気にならない。
月々3.69ドル払って養子にしないと2050年までにどれほど多くの孤児が餓死するか、
そういうことにもそそられない。わたしの関心事は、野球だけ。いったいなぜだろう?
それは、ほかの分野の数字と違って、野球のデータには言葉と同じ力があるからだ」
ビル・ジェイムス『野球抄1985』より
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氏によると「守備に関するデータは、数字としては存在意義があっても、言語としては意味がない」
のだそうだ。