タイ珍道中2「I am what I am」。







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二日目はアユタヤ観光が中心。この日はガイドさんに引率してもらった。
ガイドさんは、タイの方で、前日空港から宿の道中もお世話になった。
その時既にうすうす感じていたが、この人の日本語はちょっと怪しかった。
いや、流暢で、語彙も豊富で、かなり勉強されたのだとはわかるんだが。
いきなり話が分からなくなる時がある。一応語学に携わる者のハシクレとして、
その「阻害要因」を分析すると。「時制」「発音」「コロケーション」ではないかな。
例えば、「ココ、○○ノキュデン(宮殿)、オサマ(王様)住ンデイマス」て、
そのキュデン(宮殿)はどこからどうみても廃墟なのである。時制は情報の根幹ぞ。
また、「ココ、オヒサマ、ノタメノ建物、オヒサマ、マチ暑イノトキ、暮ラシマス」。
なんでここで「お日様」?まさか太陽崇拝?と、限りなく想像が膨らんでしまったが、
よくよく聞くと「王妃様」らしい。僅かな発音の違いで、全然意味が変わっちまう。
或いは、「アレ、○○でぱーと、コキュ(高級)ぶらんど、化粧品、商売シマス」。
「売ってます」で済むこの文脈で、「商売」なるビッグワードは不適切。
いや、語学は難しい。自分の英語もこんなん(いやこれより遥か下)なんやろなあ…
ただ、しばらく聞くとガイドさんの話を「予測変換」出来始めた。素晴らしき適応力。
で、古都アユタヤ。きらびやかなバンコクとは対照的で、よかった。ワビサビというか。
あと、自分は山田長政の大ファンであるので、「日本人町」を訪れるのが楽しみだった。
が、行ってみると「え、これ?」。この衝撃は名○屋行った時の「清州城跡」に次ぐな。
ゾウにも乗った。帰ってから職場の女の子にそれを言ったら、非常に羨ましがられ。
「ええーぇ、ゾウに乗るのと、イルカと一緒に泳ぐの、夢だったんですぅ」(おおそうか)
これ、慣れるまでは正直しんどいぞ。あと、ごつごつしてて、ちょっとくさいぞ。
そして慣れて楽しくなってきた頃に終わってしまうぞ、とは夢を壊さないために言えず。
ただ、お世話になった「カムライペットさん」(ゾウの名)は可愛く、愛おしかった。
バンコクへの帰路はチャオプラヤ川(メナム)をクルーズ。ゆったりした時間がうれしい。
渋滞がないのもよかった。後日たっぷり書くが、タイの渋滞は想像を絶するほどだ。
補足。この川は日本で時々「メナム川」と言われるが、実は「メナム」とは「川」の意。
つまり「川川」と言ってるのと同じなんだとか。すごいな、「ザ・川」なんやで。
夜は、前々から観てみたかった「タイ舞踊」を予定していた。が、ガイドさんは朝から、
「ココ、コノアタリノマチ、にゅはふ(ニューハーフ)ノしょー、近イデス」
「夜、にゅはふノしょー、行キマスカー」 と、どうしてもそっちに行って欲しそうで。
いや、タイ舞踊に行きたい、と言うと、「なんでそんなもん観たいのか」とも言いたげ。
それでも、タイ舞踊のディナーショーを予約してくれた。そしてすかさず付け加えた。
「ソレ、にゅはふノしょー、トナリデスネー」
あまりのしつこさにのけぞったが、正直、ニューハーフは微妙、と思っていたので、
いやむにゃむにゃ、と言を濁していた。そいう、いかにも海外旅行、てのが恥ずかしく。
偏見だが、日本人が海外行ってやる恥ずかしい行為ってば、一に買春、二にブランド漁り、
三、四がなくて、五にニューハーフショー、ぐらいに思っていたから。
ところが、タイ舞踊がちょっと期待外れであった。なんだかの行政のお墨付きやのにねえ…
きれいなんやけど、やっつけっぽかった。やらずもがなの「日本向けサービス」もイタい。
そんなんで、消化不良だったので。思いきって行きましたがな。隣のにゅはふノしょー(何)
これがすごいよかった。いや、あんなにすすめるだけのことはあるわ。
トップバッターの「I am what I am」に乗せたダンスに、いきなりぐぐっと引き付けられた。
ダンスの切れと、ダンサーの豊かな表情。そして「I am what I am」のメッセージが印象的。
彼女ら(彼ら?)はショーのプロだ、と思った。自分をいかに魅せるか、日々、闘っている。
言うたらあれやけど、行政のお墨付きとかで守られているのんとは、根性が違う。
二番バッターは、「日本向け」に「赤いスイートピー」。こっちはイキな「日本向け」。
舞台の「ちょっと間違ってる感」も御愛嬌だ。口パクなんだろけど、溢れるエア歌唱力。
本家顔負けのブリブリっぷりは研究され尽くしている。すっかり感心し、笑顔満面の自分。
そこでふっと、横を向くと、ヨメは、なぜか号泣していた。
どうしたのかと思った。旅の疲れが出たか、こんなん観ててお父さんお母さんごめん、とか。
聞けば、健気さ、ひたむきさ、そしてプロ根性に心を貫かれた、ということだ。
ああ、女の子になりたかったんやな、そして今その最前線でそんな自分を出してんやな、と。
そういわれたら分かる気がするが、いや、男の自分には心底からの理解はでけへんかも。
かくて「ヨメ、ニューハーフショーで号泣事件」は、長らくムーラン家の歴史に刻まれるだろう。
ま、自分の方が、ここで書けへんような事件を沢山起してるので、あまり言えへんのであるが。