もうひとつの甲子園2011。

先週、訃報が続いたり。また昨今の台風被害もあり、書く気がおこらなかったのだが。
当日記を楽しみに待ってらっしゃる方もいるかと、思い直し筆をとった次第であります。
で、久しぶりに書くネタがまた、強烈なオタクネタなのですが。恐縮至極。
*****




もう一週間前のこととなってしまったが、例年の如く、高校軟式野球の決勝戦を観戦。
一週間経った今も、受けた感動はありありと残っている。はるばる明石まで行った甲斐あり。
軟式野球のそもそもの魅力については、過去にも述べたので、そちらに譲るとするが、
http://d.hatena.ne.jp/Moulin/20070826
http://d.hatena.ne.jp/Moulin/20100831
加えて今回は、作新学院―中京高校という、軟式オタクには決して見逃せないカードであった。
かたや、優勝は最多の8回を誇る、栃木・作新学院。最近では08年と09年に連覇をしている。
こなた、優勝4回の岐阜・中京高校(旧・中京商業)。こちらも98年・99年の連覇経験がある。
また両校は、06年と08年の二度、決勝で相まみえている。二度とも作新学院に軍配が上がった。
特に08年は、軟式球史に残る「延長15回・引き分け再試合」の末の勝利ということである。
まさに武蔵と小次郎、阪神と巨人。かくのごときライバル関係は硬式高校野球にも珍しい。
毎度の判官贔屓の自分としては、どうしても中京に肩入れしたくなってしまう。
この中京は、かの愛知・中京(大中京)と姉妹校とまではいかずとも、従姉妹校と言ってもよく。
その関係からか、純白・襟付き・ブロック体のロゴ、と昔の愛知・中京と酷似したユニフォームで。
それが自分は大好きだ。(それを変えた今の「中京大中京」には残念な思いを正直持っている。)
自然に、足は中京側スタンドに向かった。そこからは、作新チアガールの機敏な動きが良く見えた。
別に妙な目で見ているわけではないよ(蛇足)。振りのキレに感動していた、ということだ。
試合は、大方の予想通り、作新・大塚投手、中京・下田投手、両好投手の壮絶な投げ合いになった。
大塚投手は今大会はおろか、地方大会から1点も取られていない。「背番号4の大エース」である。
蛇足ながら、自分は「4」とか「5」とか「6」とかを背負った投手に、魅力を感じている。
なんかこう、うまくいえんけど、「緊急事態感」が溢れてて、それがとてつもなくかっこいいのだ。
聞けば、彼は投手に転向したのはこの春からだというから、それが驚きに輪をかける。
一方の下田投手は、準々決勝で完全試合を達成。準決勝では1安打完封。こちらも絶好調だ。
ただでさえディフェンシブな軟式野球なのだが、案の定、終盤までは点が入る雰囲気がなかった。
しかし、守備の果敢な動きがあり、それは十分楽しめた。珍しい「ライトゴロ」も見た。
応援の雰囲気も非常に良かった。また、周りは保護者やOB等の「関係者」が多く、そういった、
まさに「直接的な」応援が非常に楽しかった。そして中京の「打倒作新」の想いも理解した。
途中、炎天下ゆえ手持ちの水分が無くなった。売りに来たりは全くしないし、買いに行こうにも、
自分はスコアをつけてるので(オタクか)、手が離せない。どうしようかな、と悩んでいたが。
おそらく中京の保護者と思われる方から「どうぞ」と、冷凍ペットボトルを頂いてしまった。
いやはや、思わぬところで一宿一飯の恩義ができてしまった。これも軟式ならでは、のことかも。
果てしなく続くかと思われた、両投手による0の均衡(福本氏の言うところの「たこやき」)は、
思わぬ形で破綻した。延長11回表、中京一塁手のエラーで、遂に作新に1点が入った。
スタンドの落胆ぶりは相当だった。後ろにいた、非常に中京に関係が深いと思われる年配男性は、
(前の監督さん?定かではない)「またか… 結局どうしても勝てない…」(本当は方言)と、
悔しそうにこぼしてらっしゃった。その裏、中京最後の攻撃も、三ゴロ、捕飛と、簡単に二死。
もはやこれまで、と思われた。筆者も思った。
が。
奇蹟、という言葉で片付けたくはないのだが。やっぱ、そいうことはある。
時間で区切られる競技とは違い、野球は最後の1球まで可能性がある。だから野球観戦はやめられない。
二番が球をよく見て、四球で出る。さしもの作新・大塚投手も、勝ちを意識し緊張したか。
そして三番がセオリー通りに初球を叩き、二遊間を破る。二死、一二塁!
そして、四番に回った。そして、この四番は今大会、一本もヒットを打っていない。
ネクストサークルでは、五番打者が、へたり込んでしまってうなだれつつ、四番に声をかける。
この五番打者こそ、表で決定的なエラーをした、一塁手その人であった。
一球目のフルスイングはファールに。
そして二球目。
それぞれの思いを乗せた白球は、緑の芝と青い空の間に大きく弧を描き、センターの頭を越えた…
なんとなんとの、逆転サヨナラ打。
中京高校、5回目の優勝なる。三度目の正直はそこにあった!
いやなんかもう、映画やドラマにしたら、ベタ過ぎて笑ってしまうようなシナリオだろうが。
それが現実に起こった。その感動もまあ、それはそれで、すごいものだったのだが。
後ろの「関係者」の方は、周りと「ありがとう」と握手しつつ、顔をくしゃくしゃにして泣いてらした。
それとエラーした一塁手。彼はもう、感極まって立つこともままならないようで、仲間に支えられる中、
おいおいと泣いていた。彼らの思いを想像するにつけ、こちらもぐっときた。書いてる今もきてるわ。
めでたし、めでたし、と。
しかし、ここで終わらないのが、不肖ムーランの恐ろしさ。
感動の名場面をカメラにおさめようとしたら、電池が切れてしまった。慌ててもう一度ボタン押したら、
レンズが出たまま、引っ込まなくなった。ちょうこれ、どうやって持って帰ったらええねん。
もうひとつ。最後スコアを締めて「ナイスゲーム!」と大書したいところだったが、ちょっと待て、と。
最後はシングルだったか二塁打だったか見逃した。また、彼は「残塁」になるんだろうか、わからない。
だから、その「奇蹟の一打」は、自分のスコアでは今も記録できないままである。
まあ、そこで時間が止まっているのも、悪くなかろう。だから、このままでよかろう。
いやまて、カメラの方はそうはいかんぞ。