『英国王のスピーチ』。

英国王のスピーチ コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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遅ればせながら、行きつけの小さな映画館で観てきた。
そら、とるわ、アカデミー、というのが率直な感想だ。そしてこの作品がとってくれて嬉しかった。
一瞬たりとも眠たくなることがなかった。自分としてはこれ、おおごとである。
同じ場所で前に見た映画とエラチガだった。まあ、比べるのも可愛そうではあるのだが。
観た後で、心の中を爽やかな風が吹き抜けた。こんなにも、幸せな気分になる鑑賞も珍しかったと思う。
まだご覧になっていない方には、強くお勧めしたい。
以下はネタバレ感想。










あまり、映画鑑賞で感情移入をしない自分ではあるのだが。
この映画においては、感情移入すべき対象が数多くおり、非常に忙しかった。
まずは主人公のジョージ6世の苦悩。自分も少しその気があるかもしれず、人前で話すことはとてつもない苦痛だ。
周囲の目の恐怖。「無限の沈黙」への恐怖。それが痛いほどにわかる気がした。しかし、役目からは逃れられない。
そして、王という立場と、父への葛藤。幼少期のトラウマ。それもなんか、臓腑をえぐられる思いで観ていた。
次に、もう一人の主人公である、「言語療法士」ライオネル。王や王族を向こうにして、全くひるまぬ胆力。
また、罵られても拒絶されても、そのたびに王を大きく包み込むその寛容。それは療法士というより教師のようで。
ラストの、王についてて一心にサポートし、そしてだんだんやることがなくなり、微笑んで見つめるだけになる場面。
あそこがもう、最高であった。自分も教師のハシクレとして、こうでなければ、でも、道は遠いな、という思いだ。
そして、「もぐり」のライオネルのあの自信。およそ仕事をする者は、自分が何を持っているかではなく、
他人に何を与えられるか、それで能力が図られるのだと、そういう思いを強くした。
また、王の妻の献身的姿勢には。ヘタレ夫の一人として、ほんと、すみません、という感じであった。
最後におまけとして。ヒトラーが出てきた時は、「こいつと闘わんといかんねんなー」という何ともいえぬ思いが
去来したこと。バカ兄貴に関しては、バカ兄貴の一人として、ほんと、すみませんという感じがしたこと(またか)。
付け加えさせていただく。
ともかく、みんなそれぞれにいろいろあるが、それぞれの持ち場で、頑張っとんねん、頑張らなあかんねん、と。
このご時世、特にそれが貴重であるんでないかな。
蛇足ながら、日本の皇室で、この種の映画は絶対つくれんのやろなー。これも文化の違いというか、ね。



<本日の言葉>
To be, or not to be, that is the question:
Whether 'tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune
Or to take arms 'gainst a sea of troubles,
And by opposing end them?
(このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。
 どちらがりっぱな生き方か、このまま心のうちに
 暴虐な運命の矢弾ををじっと耐えしのぶことか、
 それとも寄せくる怒濤の苦難に敢然と立ち向かい、
 闘ってそれに終止符をうつことか?)
          William Shakespeare