観戦記・東北vs大垣日大。





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自分はただの野球オタクであるが。
そこは一寸のオタクにも五分の魂。オタクならオタクなりの復興支援があるのではないか、と。
被災地から万難を排し出場の東北高校。応援団が来ることは難しいだろう。ならば、せめて自分が、と。
三塁アルプスでの応援に参加した。自分と同じような思いを持った関西の人間が多いとみえて、
予想に反し、アルプスは大入り満員であった。今回の震災以降の諸々について、あまり「痛み」を
分かち合っているとは言えない関西ではあるが。どうしてどうして、関西魂、ここにあり、だ。
失礼ながら普段は野球を観ないだろうような、御婦人連中やら、ママと子供連れやら、若い女性やら、
そういう人々が目に付いた。平日の朝試合、ということもあろうが、いかにも特徴的ではあった。
試合前の万雷の拍手と、打ち振られる「がんばれ東北」の小旗と、それだけで既に目が潤んでしまった。
しかし、何千試合と野球を観てきた自分ではあるが、こんなにも胸迫る思いで、そして切ない思いで、
野球を観たことは初めてであった。暖かい、いや熱い思いと、それに容赦なく襲いかかる「現実」。
試合開始の暖かい支援ムードを、何度も鋭い弾道が切り裂く。いかにも象徴的な光景であった。
そしてその「現実」を演じきった大垣日大高校も、見事であった。あの「鬼の阪口」と呼ばれた男が、
敢えて自ら「鬼」となった。なんかそう、その監督さんの思いを想像するにつけまた、ぐっときた。
また、大垣の葛西(かっさい)投手がよかった。背中から来るスライダー。左打者にあれは打てない。
そして、そのメンタルの強さ。東北を応援したい気持ちは強かったが、本当に敵ながら天晴れであった。
それにつけても、幻のHR(←八木裕的な←わかる人は少なかろう)もあったりで、運にも見放された感じだった。
この上まだ、運がないのか。神はなぜかくも試練を与えるのか、と、怒りすら覚えるほどであった。
しかし、プレイボールの声がかかった以上、試合は続くのであるよ。
終盤、たまりかねたか、アルプスのそこここで、ばらばらに、兄ちゃんが、おっさんが、勝手に応援を始めた。
だんだんその周りがその人に同調し始め小集団が乱立。それが東北野球部員の応援と関係なかったので、
初めはハラハラしていた。が、それぞればらばらの声は、大きくなると、不思議と調和していた気がする。
そして九回、アルプスの全員が立ち上がり、東北打者に旗を振る、手拍子を送る。自分もそれに倣った。
なんとも言えない思いであった。みんながこんなにひとつになれる。でも、結果には繋がらなかった。
でもでも、結果よりも、大事なものが実はあるんではないか、と。それが何であるか、ゆっくり考えたい。
開催については賛否両論あった選抜高校野球であるが、やはりやってよかったんではないか、と。
この日を経験した自分は、そう思うが。被災地の方がどうお思いになるかは、また別で。
また、自分は日常に帰って行くが、東北高校は被災地へ帰って行くのだ。そのことも忘れてはならんかと。
すんません。なんか、ばらばらな思いが一気に押し寄せて、そのまま書いてしまいました。
わけがわからないかもしれません。しかし、不思議とまとまっている、ということを期待します。
この日の、一生忘れられぬ声援のように。