『壬生義士伝』。

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)

壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)

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感動のうちに読了。電車の中で読む本ではないね。基本ずっと涙目になる。
特に、ある場面では(それはあとで)、夜中にひとり号泣するに至る。はずかし。
龍馬ブーム、維新ブームの今年、「そっちばっかり」の感がないではない。
根が天邪鬼なので、「じゃあこっちも」という気になってしまう。動機は何気なかった。
何の予備知識もなく(映画も観ず)読んだのだけど。しかし思った以上にいい本だった。
また、去年の暮れに会津に、今年の夏に南部に(八戸だけど)行ったこともあって、
不思議な縁も感じた。できれば読んでから行きたかったが… それは言うても詮無きこと。
とにかく泣き所満載。ラストシーンも「残心」という感じでしみじみとよかった。
主人公(など)の独白と、主人公(など)を話題とするインタビューが交互に繰り返される、
その独特な文体も面白かった。インタビュー部分は何だか、聖書っぽいな、と思った。
それこそ、今後の自分にとっての「聖書」足りえる本ではないかな。多すぎるほど学びがあった。
他の人とは「ツボ」が違うかもだけど。とにかく読む人の数だけ「ツボ」があると思う。
たとえば… 以下はネタバレ防止に反転します。
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「何ができると言うほど、おまえは何もしていないじゃないか。生まれてきたからには、
 何かしらなすべきことがあるはずだ。何もしていないおまえは、ここで死んではならない。」
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「…盛岡の桜は石ば割って咲ぐ。盛岡の辛夷(こぶし)は、北さ向いても咲ぐのす。んだば、
 おぬしらもぬくぬくと春ば来るのを待つではねぞ。南部の武士ならば、みごと石ば割って咲げ。
 盛岡の子だれば、北さ向いて咲げ…」
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「人の器を大小で評するならば、奴は小人じゃよ… しかしそのちっぽけな器は、あまりに硬く、
 あまりに確かであった。おのれの分というものを徹頭徹尾わきまえた、
 あれはあまりに硬く美しい器の持ち主じゃった…」
(私が号泣した場面は斉藤一会津と盛岡を訪れたところです。)
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「道化はな、曲芸師たちよりずっと芸が上手なんだよ。誰よりも上手だから道化ができるんだ。
 あんなこと、誰ができるものか」
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「義ノ一度喪失セバ 必至(かならずや) 人心荒穢シ 文化文明之興隆如何ニ拘ラズ
 国殆(あやう)シト存ジ候 人道正義ノ道サテ置テ 何ノ繁栄欣喜之有リ候也」
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「南部盛岡は日本一の美しい国でござんす。西に岩手山がそびえ、東には早池峰…」
そこまで美しいと主人公が言う盛岡、是非行ってみたい。また行きたい場所が増えてしまった。
蛇足ながら。本小説にて龍馬殺しの「真犯人」がわかります。ほんとのところ、どうなんかなー。
しかしひとつの話としては面白い。少なくとも「亀さま」が犯人よりは(あっ)