越智順子の魂。

昨日「越智順子バースデーメモリアル フィルムコンサート」に行った。
越智順子さん。大阪を中心に全国にも歌の輪を広げていらっしゃった、
知る人ぞ知るジャズシンガーであった。パワフルかつソウルフルな声は
言うまでもなく、「大阪のおばちゃん」そのものの、いや、御本人からは
「おばちゃんちゃう、おねえちゃんや」と言われそうだが、それはともかく。
軽妙なトークと、まさに、お日様のような笑顔が印象的なシンガーであった。
大阪、ジャズシンガーとくれば、綾戸智絵さんがあまりにも有名だが。
比べるのも失礼なのだが、話を分かりやすくするために、ご容赦。
綾戸さんのような、「前面に迸るエネルギー」というのとはいささか違って。
越智さんは、どしっと全てを受け止める横綱相撲、って感じであった。
久しぶりに映像で拝見したその姿は、「阿弥陀如来」さながらであった。
いや、御本人からは、「横綱てなんや、阿弥陀てなんや」とまたお叱りを
受けそうであるが。意外と「ええな、それも」と笑って受け入れてくれそうだ…
いや、正確には「だった」と過去形で言わねばならない。こんな残念なことはない。
越智さんが亡くなられたのは、二年前の夏のことである。自分にとっては、
あまりに突然の知らせであり、到底受け入れられるものではなかった。
それはいまだに、そうである。昨日も非常に楽しい映像の数々を見ながら、
非常に楽しい時を過ごしたわけだが。笑いながら、涙が出る、ちうのは不思議だった。
「笑い泣き」ちうのとは違う。めちゃめちゃおもろい。でももうその人はいない。
そのあまりにも単純な事実。そしてその厳しさ。それに打ちのめされそうになる。
越智さんとの「出会い」は、結婚前、ヨメと交際していた頃のことである。
ヨメのグループが行きつけていたバーがあって、そこに歌いにいらっしゃるのに
参加したのである。当時、正直ジャズのジャの字も知らなかった私であり、
ともすると、「いきってる」(標準語訳:「気取ってお高くとまっている」)という
印象をジャズに対して持っていたところが。その意識を根底から覆された。
歌は、ジャズは、楽しくてなんぼだ、と。凝り固まった私の小さな心を吹き飛ばした。
すっかり心酔し、その場で御本人からCDを買ってしまった。越智さんは、そのCDに、
珍しい私の名前を何度も聞きなおしつつサインをしてくれた…、が、それでも間違えた(笑)
「ごめんごめん」といいつつ訂正を加えれらたCDは、今手元にある。
今となっては、間違えられた方がかえって温かみが残ってよかったな、と思ってしまう。
そういや初回に味をしめ、またの機会には、ジャズ好きな先輩を連れて一緒に来たなあ、と。
その先輩も、もうこの世の人ではないのである。人の命の儚さ、とはこのことであるよ。
・・・・
話はかわるが、昨日、不思議な感覚になった瞬間があった。
昨年の暮れ、「10000人の第九」に参加した義父の応援に行った時に話はさかのぼる。
(参考)http://d.hatena.ne.jp/Moulin/20091207
その日、「あなたも第九やってみたら、」とヨメに薦められまんざらでもなかったのだが。
全く脈絡なく、「コーラスもええけど、ジャズボーカルとかもやってみたいなあ、
とか思ったりもするなあ。越智順子の魂をオレは継ぐんや。」と自分が話したのであった。
恥ずかしい話、自分で言っておきながら、ジャズボーカル云々の話は全く忘れていた。
しかし、昨日の映像で、「10000人の第九」指揮者の佐渡裕氏が出てきて、びっくりした。
佐渡氏と越智さんは共に仕事をしており(その映像も紹介された。はじめて見知った。)、
「10000人…」にも越智さんに参加してもらう話であったとか。(テノールとして…というのは
冗談かほんまかよくわからんのだが。) それは残念ながら、実現することはなかった。
どっかで、なにかかが大きく大きく繋がってるんではないかなあ、という不思議な感覚。だ。
また、越智さんは出席できずとも、越智さんの魂は、「そこ」にあったのではないか、と。
ジャズをやるコーラスをやるは別として、方法はなんでもいい。ともかく、
越智順子が歌を通じて伝えたかったこと。それを自分も伝えてゆくこと。
それが「越智順子の魂を継ぐ」ということではないか、と。
そう考えるころには、涙が乾いていた。
昨日最後の曲は、現在自分が最も気に入っているジャズ曲である『Spain』であった。
この曲は越智順子さんの十八番であると、勝手に思っているが。「越智スペ」はほんま素晴らしい。
二十歳代も後半になるまで、この曲名となっている国と、浅からぬ縁が自分にできるとは。
夢にも思わなかった。再び。どっかで、なにかが大きく大きく繋がっている。
その繋がりに導かれ、自分の伝えるべきことを伝えてゆく。
何をどう、伝えれるんかはいまだにわからんけど。わかるまで歩いていこう、と。
それが生きるちうことではないか、と。あー、何か自分、イタいこと言うてるが。
ま、笑って許して。越智さんの笑顔の如く。
本日は(も)、支離滅裂ですが。それもご容赦。
*****
Brighter days, I can see such brighter days...
When every song we sang is sung again...
And now we know, we know this time it's for good...
And we're lovers once again, and you're near me ...
                   『Spain』より