ベスト4、なんちゃって。

古い漫画で恐縮だが、『やったろうじゃん』という野球漫画が結構好きだった。
「だった」と過去形で言うのは、スポ根漫画の宿命と言おうか、最初の方の
下積み時代は結構面白いのに、強くなってからのグダグダ感が興趣をそいだからだ。
特に、主人公が変わってからがどうも…、とまあ、そんな話はここではどうでもよい。
今日ここで取り上げたいのは、その漫画の初回の印象的な一場面である。
普通の無名高校の、そこそこ強いがまあ普通の部類の野球部に、かつて甲子園の
優勝投手だった教師がやってくる、というシナリオである。その冒頭、教師は
部員たちの楽しそうな練習を遠目に見学し、そして無人の部室を訪れる。
そこには、こう貼り紙がある。
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「めざせ!!甲子園 …なんちゃって」
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教師は、一瞬怪訝な顔をするも、溜息とともに笑って「なんちゃって、か」と呟く。
その後、部員との初対面。「さっき部室で見たんだけど、これ、本気で思ってんのかな」
と貼り紙を示すことから話を始める。高校野球やっている限り夢ですよ、という部員に
夢でもないよ、やり方によっちゃまったく手が届かないってことはないよ、と語る。
その気になりはじめた部員に、教師は、たたみかける。
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「本気…か?」
「オレがやるからには、本気で甲子園目指すぞ?」
「今までみたいな楽しい野球じゃなくなるぞ?」
「チームがバラバラになるかもしれない… それだけの覚悟があるか?」
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「もちろんです」「のぞむところです」「はいはいはい」と部員は元気よく返事。
そこからま、優男風だった教師の形相がかわり、その後部員はどえらい苦労する、と。
で。
昨日のサッカー日本代表の試合である。セルビアの二軍クラスに大敗、であった。
最近は、すっかりトーンダウンしてしまったが、確か世界のベスト4を目指している
筈であったよね、日本代表。まそれがとてつもなく遠い目標であることは間違いない。
ベスト4という目標設定、あれは一体なんだったのか。あえて過去形で言ってしまうが。
国民はもとより、選手、指揮官含め、どれだけの人が本気で思っていたのか。
所詮は「なんちゃって」つきの目標ではなかったのだろうか。
アプローチは二つあると思う。ひとつは、なんちゃって、なら、なんちゃってなりに
なんちゃってレベルで楽しむこと。そう、あの教師が来る前のあの野球部のように。
思うてもみよ。昔はプロ選手すらいなかった。W杯に出られるだけで凄いことだった。
もうひとつはもちろん、本気で目指す道、である。がそのためには、現状と目標の
距離を測り、そこに至る方法論を模索する、という作業がなければならない。
その作業が、「ベスト4」を口にした時点で始まってなければならないが、
それがはたしてあったのか、またあるのか、疑問である。また、代表が本気で目指すなら、
国民も本気で目指さねばならない。それは、サッカーを面白くなくするかもしれない。
その代償を払うだけの覚悟が、国民にあるのかも疑問である。
ともかく現状は、「なんちゃって」でもない、「本気」でもない、極めて中途半端。
これは代表にとっても国民にとっても、一番不幸な状況ではないかと思うのだが。
いや、わからん。岡田監督一流の「死んだふり作戦」であるという一縷の望みを持って待つ。
ベスト4になったら、目でピーナツを噛むよ。でもま、それでなれるなら安いものだ。
蛇足だが。
昔就活で落ちまくってた時、オヤジにこんなこと言われたな、と思い出した。
「『入れるかな、入れたらいいな』と思って緊張とかしてるうちは入れんのや、
 『入るんや、入って当然や』と自然に思えるようになったら入れるのや」 と。
ほんまに、そう思えるようになって、ほんで入ったからなあ。
すぐやめちゃったけど(おい)
今の自分も、「○○、なんちゃって」つう目標をほんまいっぱい抱えてるよなあ。
本気、現状、距離感、気をつけねばならんことよな。
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<本日の言葉>
「元気、本気、いわき」



ありがとうございました。今日はこのフレーズが頭から離れません。