小林繁氏を悼む。

ああ惜しむらくは、人の命の儚さよ。
突然の訃報は、職場の新年会から帰る途中、携帯ニュースで知る。
この日はヨイドレで、いまいち記憶がオボロゲなのだが(またか)
酔い過ぎで見た幻、と思いたかったが。現実は残酷である。
自分がどうして阪神ファンになったかは覚えていないが、
さらにのめりこむきっかけを与えたのは、間違いなく彼、
小林繁であろう。
サイドスローからの美しいフォームは、明石家さんまならずとも、
真似のし甲斐があった。「投球の真似」ということにおいては、
阪急・山田久志とともに、近辺の小学生の人気を二分していた気がする。
自分が物心ついた頃は、もう絶対的エース、というほどでも
なかったが。「小林はすごかった」「巨人は汚い。小林は男だ。」
そういうセリフは周りの大人から嫌というほど聞かされていた。
(今考えたら、トレード話に乗った阪神阪神なんよなあ…)
言わずと知れた「江川事件」の翌年。鬼神のようなリベンジ劇。
実体験はなくとも、伝聞や書籍、映像などで何度も何度も反芻したものだ。
そう。小林は男であった。
文句ひとつ言わず阪神に行き、言葉ではなく結果で示した抗議もそうだし。
引退も潔かった。阪神で数少ない十勝投手でありながら「十五勝できなくなった」と
いともあっさりやめた。その引き際もそうだ。(没後、川藤氏が真の理由を語る)
ただ、私はもっとも小林を男らしいと思ったのは、例の江川氏との「和解」時である。
普通の人に優しくするのは普通の人でもできる。最も憎いであろう人に最も優しくする。
それがどれほど難しいことか。そういう時に人の心根、というのが出るのだろう。
最も憎い男を愛せる男、それは全人類を愛せる男なのかもしれない。
自分も目標としたいが。なかなか小人物である自分には難しい。
男、小林繁
人生の引き際まで、格好良くせずともよいものを。
今はただ、哀悼の意を表するのみである。
(敬称略)
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<本日の言葉>
「失意泰然」

まさにこの言葉を体現する人であったと思う。
最後に蛇足ながら、阪神は、もそっとこの人を大事にしてほしかった気がする。