四国珍道中其の参「ウズウズ・渦見物」(うわ)。


曇天の鳴門海峡をのぞむ。不気味。
何かが起こりそうな期待感が高まる。

渦潮やーい。
果たして。渦潮チックなものも見えるが…。
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それこそ、弟の言葉を借りると
「これはめっちゃ期待を膨らまして行って実際、あら、という感じ」
という話である。
世界三大がっかり観光名所は、「人魚姫」「小便小僧」「マーライオン」。
日本のそれは、「札幌時計台」「土佐の播磨屋橋」「琉球・守礼の門」。
であるそうな。世界…の方は残念ながらいずれも訪問が叶っていないが、
日本…のは三つとも行ったことがある。札幌と琉球はそれなりに趣が
あった気がするが。播磨屋橋はねえ。まそれもまそれなりに(奥歯にモノが)
しかしそれもまた、旅の思い出。旅の価値。マーライオンに行ってない人は
マーライオンにがっかりすることはできないわけであるから。
その観点では「鳴門の渦潮」も、含められてもいいのかもしれないが。
上に挙げた6つの場所と「鳴門…」が違うのは、自然相手であるということ。
そして、条件により見え方が全然違う(らしい)ということである。
かつて学生時代に一度訪れた時は、めっちゃ期待して行ったが、ベタなぎで。
結局海だけ眺めて帰ってきた感じだった。釣竿くらい持っていけばよかった、と。
前は鳴門側からだったが、今回は淡路島から「咸臨丸」に乗って行った。
咸臨丸と言えば、かの福沢諭吉勝海舟が国を背負って太平洋を渡った、あの船だ。
何故その咸臨丸(レプリカ)が、ここ淡路で浣腸もとい観潮船になっているか。
その理由は寡聞にして知らない。しかしなんとなく引き付けられてしまった。思う壺。
咸臨丸は銅鑼の音を響かせて淡路を「出帆」(帆は機能しているのか)。憎い演出。
昨夜のサイトの目前を滑るように進んでゆく。それなりに気持ちは高まる。
船内には淡路や鳴門の観光案内テープが流れ。海峡に近づくと、なんたら音頭のBGM。
「さながら滝のようにごうごうと」とか「音の鳴る海峡、が鳴門の語源」みたいな
文句を並べ、期待感を高める。私は前の経験があったので、冷静であった。
渦そのものは、まあこんなものかな、という感じだった。前よりは見られた感じだ。
特に、瀬戸内海と太平洋の海面の差を肉眼で見られたのは、プチ感動であった。が。
それよりも「左から潮に近づきます!」「今度は右です!」「すみません左です!」
という船員必死の指示に従い文字通り右往左往するのが楽しかった。
また、海峡を離れる時の観光テープの「いかがでした? 先ほど申しあげたような
大渦ではなかったかもしれません… 見頃は春の大潮の時で… 」という、
言い訳モードが可愛かった。お前自分の言ったことに責任持てや、とツッコむ。
しかしこういうテープまで用意されているつうのは、やはり「がっかり」がデフォルト
なんだろうな、と。
負け惜しみなんかもしれんけど、じゃあ、春の大潮に合うように、めっさ調べて行って、
すごい最大級の渦を見たならば。それはそれで感動的で楽しいものなんだろけど、
この日感じたような、「爽やかな虚しさ」「心地よい徒労感」は絶対に味わえないだろう。
甘いばかりが旅の味じゃない。苦味も渋味もまた旅の味である。人生もそれに似て。
と、なんかようわからんまとめかたやけど。今回の旅日記はこれにて。
ではバイならよ。(すみません、クソ暑くて妙にハイなのです)
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<本日の言葉>
「外国へ行く者が、よく事情を知らぬから知らぬからと言うが、
 知って行こうというのが良くない。
 何も用意しないでフイと行って、不用意に見て来こなければならぬ。」
                    勝 海舟