野球と人生と。

前にも何回か書いたことのあるネタのような気がするが。
改めて今一度。私のような野球バカも野球バカなりに人生を送っているわけで。
ただ、バカゆえに。人生の重要な局面にどうしても野球がオーバーラップする。
今回、その局面が性懲りもなくまた増えた。ごめんなさい、ヨレヨレの話だが。
自分の気持ちの整理にお付き合いさせてしまって申し訳ない。
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学生時代、実家に帰っての食卓。テレビではいつものように阪神戦が点いていた。
自分が何したいんか何してるんかもようわからず、ただその場の快楽を求め生きてた当時。
いやそれは今もそうなんかもしれないがそれは置いといて。何かをきっかけにすごい
親と口論になった。詳しい内容は忘れてしまったが、何かが混じって少し塩気の効いたごはん。
その味は覚えている。つうか、その期に及んでまだ食うとるんかい、とひとつ思うが。
あと、不思議なことに。親子双方の爆発に触発されたか或いはその逆か。
いつもは水を打ったように静かな阪神打線が、すごく珍しく火を噴き、怒涛の連打を見せた。
確かイニングに5点以上は取った気がする。歓声が上がるたび、親子双方、議論の最中ちらっと
視線をテレビにやったのが、今から思うとユーモラスではある。優勝の行方やシーズンの大勢にも
全く影響のない、ただの一試合に乱れ咲いた花である。しかしそれも阪神の長い長い歴史の一部。
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時は流れて、今度は、今のヨメさんと結婚しようかという段になった時のことである。
ヨメ実家に挨拶に行きたい、と言うと今の義父から、その前にサシで飲みに行こうと誘われた。
生身の君を知りたい、という義父のメッセージと受け取った。この時不思議と、おっしゃあじゃあ、
生身の自分で行こう。それでだめならまたそれで何とかしよう、それから考えよう。そう思えたのである。
場所は学生時代に親不孝の限りを尽くした土地の、何回か入ったことのある酒場であったのも縁だ。
そこで自分はぶちまけられるだけぶちまけた。いやぶちまけられた方はたまったものではないだろが。と
BGMは、飾らない酒場らしく、ラジオの野球中継であった。忘れもしない、甲子園の阪神巨人戦である。
詳細は忘れてしまったが(忘れとるがな)、当時にしては珍しくいい試合をしていた。勝負になっていた。
序盤巨人に離されるも、当時一世を風靡した、代打の神様八木裕の効果的な3ランで追いすがった。
義父は実は大の巨人ファンである、ということをヨメに聞いていた。こっちが阪神ファンであることも
ヨメは義父に伝えていたはずである。真剣な話をしている最中、こっちが上を向くとあっちは下を向き、
向こうがオッっと声を漏らすとこちらはエッと応じた。いや応じた、というのは正確ではなく。
前の例と同様、お互いめちゃめちゃ意識しているのに、そのことには一言も触れない、というのは
今から思えばなんともおかしい。肝心なとこで生身のお互いを晒してないやん、とのツッコミもあろうが。
まあ、それ以外の部分は、概ね伝えられた。酔うほどにお互いの弁は進み、最終的に結婚の意を伝えると、
「え、結婚すんの、それはおめでとうございます」と今から思うと義父らしい返答を拍手と共にもらった。
ただし条件があると。自分が生きることと、二人が一緒になることと。それでどのようなメッセージを
新時代に残せるのかそれを考えなさい、みたいなことだったような気がする。ような気がする、というのは
義父との酒勝負もこの段では敗色濃厚で、ちょっともうろうとしつつあったからである。自分は確かに
「はい」と答えた。この記憶は絶対確かである。その後自分は静かに微笑みつつマットに沈んだ(つまり寝た)。
酒の上では完全なKO負けであった。この日の阪神の敗北とそれが前後がどうであったかもわからない。
あの「はい」は酒の上でのことだったのか。あの時の義父と自分に恥じぬよう自分は生きているのか。
あの時のように自分は生身の自分でやってるのか。いろんなもので自分を飾り守ってるだけじゃないのか。
つうか私が、私たちが、残せるメッセージて何なのかわかってるのか、わかろうとしているのか。
ま、繰言をいくら言っても仕方ないので。てか、この文自体繰言なわけだが。む。
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先日のことである。凹むことがあって。ひとり車を走らせている時のことである。
やはりBGMは、ラジオの野球中継であった。試合は終盤、阪神は善戦虚しく劣勢であった。
ま、弱いもんは弱いなりに耐えていかんといかん。結果はどうあれ、頑張ったことに価値があるんや。
投げんとやることに価値があるんや、と、ぶらぶら思いながら家路についていた。
ところが、そこから奇跡、である。9回裏突然目覚めた阪神打線はリリーフ馬原に襲い掛かる。
金本の逆転タイムリーが外野に抜けた瞬間、ドバドバ涙が出てきた。
ええやん車の中やし、誰にも見られてへん。しかし運転上はすこし危うかった。
ずっと応援してきた阪神に、応援されたような気がした一瞬であった。
阪神に泣き、阪神と生き、阪神に救われる嗚呼野球馬鹿人生。
試合はまだ終わっていない。
人生、逆転サヨナラだ。
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<本日の言葉>
手前味噌で悪いが。最後の二行。