WBC最終回「己の役割/好敵手・好勝負」

劇的に幕を下ろした、WBC。もう充分すぎるほどに堪能した春三月であった。
終わってしまうのは、いささか寂しいが、戻ってきた選手たちの国内での活躍を
また違った目で注目してゆきたい。大リーグの方も生温かく観て行きたい。
登録28人が、村田も入れて29人が、それぞれ、自分の役割を果たした結果である。
岩隈や青木、片岡、中島、小笠原、杉内など、目だった結果を出した選手はもちろん。
話はよれるが、この日の真のヒーローは内川であった気がする。4戦目しかり、
この日しかりで、逆境で雰囲気を変えるプレイを連発した。岩隈被弾のあとの好プレイ。
そして、10回表の執念のライト前一撃。これにはほんまに涙が出そうだった。
その他、日本に帰った村田も含め、出ていない選手も、自分の仕事を果たしたろう。
川崎はやはりよく声を出していた。「僕はベンチで闘ってます」の言葉には重みがあった。
栗原は大抜擢には答えられなかったが、オードリー春日のような笑み(失礼)が印象的だった。
球児は、ダルに調整法を教えたと聞く。ダルが出て行けたのも、球児が碇となったからと思いたい。
亀井、石原などは、おそらく下積みの連続だったろうが。それも組織には重要な役割だ。
そういう、いろんな力が合わさって、ひとつのものを生み出すのは、素晴らしいことである。
がやはり美味しいところを持っていったのは、二代目「持ってる男」イチローだった。
(みなさんお忘れであろうか、初代は新庄であるよ。パクッたカタチである)
あそこでの勝負に対する議論は、こっちでもあっちでも沸騰しているのだろうが。
韓国監督は、所謂「くさいところをつけ、歩かせてもいい」というサインが
伝わらなかった、とコメントしているが。正直、これは私的には疑っている。
とてもそうは見えなかった、という感じなのだが。本気モードの勝負だった。
あるいは、その前のくそボールに手を出していたのを見て、色気が出たのか。
これまでのイチローの結果を見て、ナメていたのか。いやその前にどでかいのを
同じ投手が打たれてるし… 次打者・中島との天秤の結果か… いやそれにしても
一三塁の時ならともかく、二三塁でなお勝負、というのは常識的ではない気がする。
やはり、「国内世論上、イチローから逃げることは許されなかった」というのが
私の見方ではあるが。「くさいとこ」という中途半端な指示の言が正しいとしても、
やはりあからさまにキャッチャーに腰をあげさせることはできなかったのだろう。
相手もいろんなものを背負ってやってんだ、と好敵手にも感慨を覚えた。
そりゃなあ、五回もやったら顔まで覚えるいうねん。一番をよくうってた「ヒゲ関川」のガッツ。
あれがこっちのガッツに火をつけたのではないか。そして本塁打の大リーガー。看板は伊達でない。
中川家レイジ」の四番、あのやわらかさにはほれぼれした。「林真須○」似の大柄な代打も恐怖だった。
そして言わずと知れた、「北川+関本」。あそこでヤツに回ってきた時、何かされそうな予感がしたのだ。
一度は地獄の底に突き落とされたのは、日本人皆覚えるところではないだろうか。しかし本当に打つとは。
まさに天晴れ、見事な敵ぶりであった。韓国国民も、彼らを温かく迎えてほしいなあ、と心底思う。
なんなら、私がソウルまで出向いてもいいくらいだ。だから私にお金ください。(おい)
しかし、感動的なフィナーレで消し去ってはいけない問題もある。監督選びの迷走は忘れてはいけない。
あれには、日本野球界の問題点が集約されている気がする。「終わりよければ」では同じことの繰り返しだ。
また、大会運営やシステムには疑問だらけ。曲がりなりにも盛り上がった日韓をよそに、シラケムードの他国。
これ、なんとかせないかんぞ。そして、こんな言い方したらあかんかもしらんが、敢えて言うと、
次回は、おそらく今回以上にえげつないルール改正をして、アメリカ有利に持って行こうとするんちゃうかな。
そういう姑息的な手段でなく、何卒ベストメンバーを組んで、堂々と勝負できるようなサポートをしてほしい。
そのためには、いちおうWBCが「成功」している、日韓が手を組んで、働きかけるべきではないだろうか。
何もWBCに限らず、これは他スポーツ、そして政治経済文化芸能、各方面において、言える事ではないか。
聖書によると、人類最初の殺人は、「兄弟殺し」であったらしい。一番近そうな付き合いが、実は一番難しい。
しかし、一番大切な付き合いなのは確かである。今回の激闘を通じて、見えてきたものがあるのではないか。
イチローの言葉を借りると「壁を越えた気がします」てなもんで…
こんなんのおもてるの、俺だけやろか。しかし、日本が日の丸立てんで、本当によかった。
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<本日の言葉>
「この花形、このままマウンドを去ってしまう宿敵なぞ許さん」
                 花形 満


4度戻ってくるのが、回数として多いか少ないかは、わからん。