山羊の呪いと退魔師のSo。

すんません、先にいきなり警告というか謝罪をしておきます。いつもにもまして、
本日はフルスロットル・オタクモードで行かせて頂きます。悪しからずご了承のほど。
今年のメジャーリーグに関し、日本のメディアでは、オリオールズ上原、ブレーブズ川上が
大々的に取り上げられている。私にしてみれば、二人ともおお、渋いなあ…というチームに
加わってくれたのでそれはそれで注目しているが。その二人以上に私が密かに目を向けるのは、
派手に入団会見をぶった二人をよそに、ひっそり囲み記事で伝えられていた田口壮のニュース。
マイナー契約ながら、シカゴ・カブスへの入団がきまったとか。カブスと田口、実に面白い。
前にも書いたと思うが、アメリカは歴史が浅いという自覚からか、自国の歴史とか因縁とかを
日本以上に大事にしている気がする。他国のそれはともかく…というとまた毒になってしまうが。
特に、スポーツ界においてはそれが顕著である。記録やら挿話やらが日本以上に尊重される。
シカゴ・カブス。永遠のダメチームである。いや、そこそこ勝負はするのだが、最後の詰めが甘い。
前回全米一に輝いたのはなんと1908年! 101年の空白は米国四大スポーツ中最大のそれである。
野球における呪いと言えば、劇的に解かれたボストン・レッドソックスの「バンビーノの呪い」や、
輝く我が名ぞ阪神タイガースにおける「カーネルサンダースの呪い」が有名であるが。
それこそ、カブスこそ、呪われたチームである。「山羊の呪い」「黒猫の呪い」「眼鏡の呪い」の
トリプルパンチは、シカゴ市民の胸中に深く深く傷を残している。て実際聞いたわけではないが。
解説しよう。いやや言われても解説しよう。
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山羊の呪い
1945年、カブスはワールド・シリーズを闘っていた。2勝1敗で迎えた第4戦でのことであった。
近くでバーを営むBilly Sianis氏は、熱心なカブスファン。ペットのヤギMurphyを連れて応援に
駆けつけるのが日課であったとか。それがどうしたわけか、球場側はこの日、ヤギの入場を拒否。
激高したBillyは毒づいた。「The Cubs, they ain't gonna win no more.」
(=カブスよ、お前はもう二度と勝てないだろう)ここに「The curse of the Billy goat」
の悲劇がはじまることとなった。ちなみに「Billy Goat Tavern」は今だシカゴの名物店であるとか。
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「黒猫の呪い」
1969年の秋は転落の秋であった。夏まではカブスは快調に首位を走り、8月半ば時点で二位メッツに
8.5ゲームの差をつけていたが、9月に入り急降下(よく聞く話だが。あーなんかすごく虚しい)
首位攻防戦の舞台、ニューヨークのシェイ・スタジアムでどこからともなく現れた黒猫。
それがカブスの運をすべてかっさらって言った、と語り継がれる。カブスは最終的にあの
「ミラクル・メッツ」の軍門に下ることとなる。
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「眼鏡の呪い」
2003年、ナリーグ優勝決定シリーズにおいて、3勝2敗でカブスは王手をかけていた。迎えた第6戦。
若きエース・プライアーの力投で、フロリダ・マーリンズに対し8回1死まで3−0でカブスリード。
58年ぶりのワールドシリーズ進出まであとアウト5つと迫った。その時、再び呪いの力が威力を発揮。
何でもないファールフライを取りに行った選手が、23個目のアウトをつかもうとした、その前に、
「悪魔の手」が伸びた。眼鏡をかけた青年ファンが、その結果的にプレーを「妨害」してしまった。
(名前もバッチリ歴史に残っているが、武士の情けで名前は伏せる)これで一気に流れが変わる。
リズムを崩したプライアーにフロリダ打線が襲い掛かり、逆転。続く第七戦も落としたことで、
青年は「優勝を叩き落とした男」の汚名を着せられ、四面楚歌となった。さらに悲劇に輪をかけるのは、
青年が、小さな頃からカブスワールドシリーズ進出を夢見てきた、生粋のカブスファンであったこと。
私はこの場面をテレビで観戦していた(採点しながら)。はっきり覚えている。おお野球の恐怖。
面白い後日譚として。フロリダ州のホテル、ホリデー・インが「うちでしばらく亡命を」と、
青年に申し出たのだとか。この辺のジョークセンス、最高である。アメリカのいい面のひとつであるかと。
青年は3ヶ月間ホテルに無料で滞在。美味しい食事と酒、水上スキーで「傷心」を癒したのだとか。
それが同じく傷心のカブスファンにどう映ったのかは知る由もない。
――
長々失礼しましたが。とまあ、こういう、まさに悪魔に取り付かれた歴史。
山羊のバーベキューをしたり、牧師がベンチに聖水を振りまいたり、数々の除霊努力も虚しかったが。
そこに立ち向かうは、ここ数年で不思議と移籍先が優勝する、「招き猫」田口壮である。
移籍決定がされるずっと前から、「呪いを解くのは田口しかいない」と一部で囁かれていた(何処で)
ので、本当に移籍が成ってびっくりした。まさか、そこまで考えての契約…?だったらすごい。
まずは田口にとっては、メジャー昇格に向けた闘い。スター選手が揃うカブス。同じ外野に福留もいる。
ベンチを暖め続けた去年以上に、田口にとっては厳しい闘いだろうが、意外と田口なら何とかやりそう。
そしてこの10月か11月か、青の軍団101年ぶりの胴上げの輪に、ちゃっかり加わっていそうな。
そういう気がする。報道は少ないだろうが、注目し応援したい。
(田口についての情報は、田口本人のHPや、「ほぼ日刊イトイ新聞」のインタビューに詳しい、と宣伝。)
しかしなあ、MLBの田口のプロフィール。「Kansai Gakuin Univ」つうの、いつになったら訂正されるのか。
投書メールしたろかな、と思うくらいで。
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<本日の言葉>
「お金のことだけを考えたら、正反対の選択ばかりしていた」
                 田口 壮


我々阪神ファンにとって、田口は「二度振られた相手」ではあるのだが。
そういうのを超えて引き付ける人間的魅力は、田口の行動に現れている気がする。
関係あるかはわからないが、カブスの本拠地、「リグレー・フィールド」は甲子園のモデルとなっている
全米で一番歴史があり美しい球場であるとか。是非一度行ってみたい場所のひとつである。
できれば田口がいる時に、てそれは無理かも。