さらば森島2。


というわけで、行ってきた。
とにかく寒かったのと、その後の業務にいささか支障があったが(冷えのぼせたか、なんか調子が)、
本当に行ってよかった。地下鉄に貼ってあったポスターに書いてあったように、まさに、
「この瞬間を見ずして、君は森島寛晃を知っていると言えるのか」と痛感した。
いや、自分などは、本当にコアなファンからすればまだまだ、にわかに過ぎないのだろうが。
それでも、自分の知らなかった森島の姿を見れたのは嬉しかった。そして大事なことを教えられた。
試合は、格下愛媛に大苦戦。早めにリードを広げ、森島のための舞台を整えるのが理想だったが、
ゲームプランがいきなり狂いはじめる。いや、ゲームプラン云々以前に、なんだそのキックの意図は?
てのが何回もあって。全体を俯瞰する察知力と先のプレーに対する想像力に欠けているのか。
或いは察知力と想像力はあるけれども、キックの精度がそれについていかないのか。それはわからないが。
こんなチームがJ1に行ったらいかんのちゃうやろか、という局面が少なからずあった。厳しい言い方だが。
(そしてお前はできるのか、と言われればつらいが) セレッソを愛するが故の苦言、と解されたい。
そして後半にはついに愛媛に先制点を許す。静まり返る長居。なんか、自分が行くとこういう静まる状況
多い気がするぞ。やぱ、阪神に対してと同様、自分が貧乏神を演じているのだろうかとも勘ぐりたくなる。
しかしセレッソは先制されようやく目が覚めたのか(目覚めが遅いのも伝統か)、あっという間に逆転。
得点後、ピッチ上の選手たちと、駆け寄った森島が抱き合って喜ぶ(イエローもらいながら)のが印象的。
しかし2−1では同点の恐れがある。引き分けでは昇格の可能性がゼロになる。安全圏にリードを広げたい。
森島を出したい。焦る攻撃陣。しかし、それをはずすかー、てゆうのが何回もあり、得点の気配がない。
場内の緊張が高まる。それを他所に、ピッチサイドでは、入念に準備体操を、ダッシュを繰り返す森島の姿。
それを見て、なんかこみ上げるものがあった。出れるのかもわからんし、結果はどうなるかわからん。
とにかく今できる最善のことをやる。それしかできることはないし、それが尊いのではなかろうか、と。
「無冠の名選手」と称される森島であるが、努力が真剣にできる幸せ、それだけで充分栄冠を手にしている。
現実のタイトルなど付録にすぎないのだ。そう思わずにはいられなかった。
そして後半ロスタイム。4分という長い時間も刻一刻となくなっていく。そして時はきた。
(この時点で、あ、仙台が勝ったな、昇格の可能性が消えたな、という予感はあった。)
コートを脱ぎピッチに向かう森島。それだけで、場内に歓声がわく。ところが審判は気付かない。
この審判はKYというか、微妙なオフサイドでゴールを取り消したりと、場内を既に敵に回していたのだが。
「こら審判、気づけーーー」「うしろーーうしろを見ろー」と叫ぶ観衆。ドリフの忍者コントかいな、と。
やっと審判は気付き、森島IN。感動は最高潮。
森島にボールが回され、「モリシのゴールが見たいー」の大合唱。得意の細かいドリブルを見せる森島。
で、終了。あら。吉本のオチのようにこける場内。実際は30秒ほどだったらしいが、10秒ほどにも感じられた。
先日いみじくも「人生で忘れられない10秒」という話をしたが、本人にとってもファンにとっても、
そして私にとっても忘れられない一瞬とはなった。短かったなあ… ま短いだけに濃度が高かったと思いたい。
会場では試合後、引退セレモニーが行われ、その後森島は場内一周した。
ほとんど、帰る人はいない。小グループで隅に固まる、愛媛サポーターまで残り森島コールを繰り返す。
またまた「モリシのゴールが見たいー」合唱が始まった。森島はそれに答え、ボールを持ってゴールに走った。
ドリブルでペナルティエリアに持ち込む森島! ゴールを守るはぬいぐるみの狼! シュート!
あーー はずれたーーー 場内爆笑。コケる森島。その後サポーターに頭を下げ「泣きの一回」を請う森島。
今度は、ど真ん中に見事決めた。キーパー狼の「情けのトンネル」があってのことではあったが。
また、来年もセレッソがJ2でシーズンを送ることが決まったこともあり、去就が注目される香川。
その日本代表にも名を連ねる有望な若手とユニフォームを交換。香川、えらいものをもらったもんだ(笑)
現実の試合では実現することのなかった、香川―森島のコンビプレイも披露してくれた。湧く場内。
優勝の栄冠もない。J1昇格の歓喜もない。しかし、この明るさが救いだった。森島は最後は笑顔だった。
森島は引退スピーチで言った。セレッソがJリーグのタイトルを取る、自分が果たせなかった夢。
その夢はサポーターのみなさんとともに、これから見て行きましょう、と。
夢が叶った瞬間、夢は終わる。
叶わぬ夢を見続ける、というのは、実は幸せなことなのかもしれない。
そう思いつつ、長居をあとにした。まさに夢と言えば、夢のようなひとときだった。
その後仕事モードに切り替えるのは非常に難しかった、ということも付け加えておく。
夢は尊く、現実は厳しい、と。