変節/既視感。

先日、仕事帰りにコンビニをひやかしていたところ、
所謂「麺本」を見つけてしまい(なんやそら)、思わず購入してしまった。
本当は自分の足で歩き、自分の舌で味わわねばならぬところだ、プロならば(誰が)。
しかし仕事や家庭やなんやかやの事情でそれもかなわず、時々「麺本」を購入しては、
バーチャル食通道に磨きをかけている次第。つうか、電車内で読むのはいささか恥ずかしい。
夢中で読み漁ってたところ、中盤にさしかかった見開きに、見知ったオヤジの満面笑みの写真が。
思わず投げ捨てたくなる衝動にかられる。うちの職場近くのラーメン屋を仕切るこのオヤジにつき
話をすると非常に長くなるのだが(そして不快なのであまりしたくないのだが、てしてるが)
要するに、「薀蓄斎」(うんちくさい)タイプなのだ。「この塩が、塩がね…」とか
「今女性から先にお出ししたのは女性の方が味覚がどーのこーの」とか。こんな台詞を吐く。いーー。
つうか、「一見さんは、つけ麺お断り」つう黄金律はどうした。「お客さん、初めてですよね…」
この台詞から何度もバトルが繰り広げられたと聞くが。思い切り「つけ麺特集」に出てるやんけ。
「つけ麺はうち本来のメニューじゃないから、つけ麺だけで判断されたくない」てのが、
黄金律の根拠だったと聞く。それはそれでわからん論理ではない。じゃつけ麺出すなよ、と思うにしろ。
最近のつけ麺ブームに乗り、オヤジが変節したのか。或いは、マスコミが勝手に騒いでるだけなのか。
あるいはオヤジの壮大な「釣り」の一環なのか。それはわからないが。オヤジの頑固さが色あせたにしろ、
我々がオヤジから受けたインパクトと、最初にすすったスープのぬるい感覚と、その時抱いた殺意。
それはいささかも色あせはしない、てか、ボス、この台詞ぱくってすみません。
そして、自分の胸だけにはしまっておけず、注進におよんでしまったご無礼をお許し。と超私信。
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で、ASAPでこの本、放ろうと思っていたのだが、せっかくだから、いちおう最後まで目を通した。
するとおや、なんだこのデジャヴは、ううん、なんだったっけ、という店が出てきた。そして記憶が蘇った。
なんかの飲み会で、でろでろに酔っ払った後、ヨメの上司の?いや師匠の?いや研究仲間の?え、何だろ?
まええわ。その何しかスペイン人の紳士が、「にんにくらーめん!にんにくらーめん!」と連呼しながら
連れていってくれた店があった。結構うまかったような気がするので、また行きたいなあと思いつつ、
ほんま記憶がオボロゲで、行ったかどうかも実はあやしいような感じだって(自分の場合、そういう店多い)
ほの黄色いネオンと、紳士の「にんに(←アクセント)くらーめん!」つう声だけが記憶の全てであった。
ヨメが後日その紳士に、その場所を聞いたが、全然要領を得なかったらしく、半ばあきらめかけていた。
いや、間違いない。ここだ。記憶はなくとも本能で食ったラーメン。本能は嘘をつかない。
麺が流れる我が血が教える。(気持ち悪いよ)。ここで絶対間違いがない。つうわけで機会があれば今度行こうかと。
でも、怖い気もする。夢は夢のままでおいといたほうがいいかもしれないし、
我が本能が試される気がするのも恐ろしい。
しかしともかく、前半のオヤジのページは切り捨てて、この本、永久保存だな。
いや、オヤジをマジックで「歴史の教科書状態」にするのもまた一興か。
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本日の言葉:
「応に住する所無くして其の心を生ずべし」  金剛般若経