アハアハ体験。

あんまり仕事のことを書くことはないが、たまには。
ほっといても勉強するし、目的意識も高く、こっちとしては、
どんな質問がくるかとあれこれ想定し研鑽を積まねばならぬ上のクラス。
それはそれでまた難しいのではあるが。
自ら学ぼうという姿勢があまりなく、なんとなく来ている、来さされている、
という感じの下のクラス。こっちはほんまに難しい。
ともすると、なんでいやがる人に無理矢理水を飲まさねばならぬのか、
自分でもわからなくなってくる。自分のモチベーションの保ち方が難しい。
上下という言葉は微妙だが、ま便宜上こう書かせてもらった。
行きがかりで両方うけもつことになったので、両方を比較して充分わかった。
格差社会、という言葉が独り歩きしている昨今だが、この格差はほんま恐ろしい。
ひょっとしたら自分は格差再生産マシーンに過ぎないのではないだろか。
そんな疑念も湧いてくる始末、いやいや、今日はこんな暗い話をするのではなかった。
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ま、いわゆる下のクラスでは、なんとか学習に興味を持ってもらおうと苦心している。
彼らは、わからないのが当たり前になってしまい、わかる喜びがわからないと見る。
いわゆる「アハ体験」を感じてもらいたい、そういう工夫をしようとしている。
「アハ体験」、日本語でいうたら、さしづめ、「おおそうか体験」である(ほんまか)
「わかりません」という言葉を極力許さず、ヒントを出してなんとか彼らの理解のプロセスに
迫ろうとやってるつもりではあるが、これが非常に難しい。コミュニケーションは共通思考で
なされるもんだから。思考が乖離してくればコミュニケーションは破綻する。
時々「売れない芸人」のようになってる自分を発見する、
て、こんな話をしたいのでもなかった。以下のことがいいたかっただけちゃうんかと。
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昨日の授業では、ちょっとかわいめの(余計)女生徒が「formalがわからないからわかりません」
というので、許さず食い下がった。「あー、フォーマルて、カタカナ英語になってるよね、
フォーマルな服装ていうでしょ、ほらこんなのよ、こんなの…」
と、ネクタイをくるくる振り回し、ワイシャツを誇示して言うと、女生徒は小首をかしげ、
しばらく考えた。そして、ぱっと顔が輝いた気がした。そう、それがアハ体験だよ。
ここが教師の喜びである。モチベーション云々の悩みも吹っ飛ぶ一瞬ではある、と思った。
が。
女生徒はゆっくりと、はっきりとした声で答えた。
「・・・・
 ・・・・
 ・・・・ マイナーな?」
ずこっ。
教師生活、大学バイトから入れたらもう10年を超えるんかな。一番こけた部類に入る。
帰って姿見で我がマイナーな風体をしげしげと見つめる次第。
マイナー芸人ムーランの苦闘は続く…