SF珍道中2「盛り上がって参りました」。





(1)金門橋にあらず。
(2)強制的に止められた駅にて。
(3)スプラッシュ・ヒット出るか。
(4)ウイリー・メイズよ永遠なれ。
機は二時間遅れで離陸した。
待つ間、成田空港を探検。中国行きのゲートは、五輪の活気を肌で感じられるほど、
熱気に溢れていた。というか、中国人うるさすぎやろ。中国語のリズムがそうなだけかもしれんが。
あと、気休めで持ってきた採点仕事をバリバリとこなす。おかげでだいぶはかどった。
飛行機は、ひとことで言うと「はずれ」だった。絶望的に狭い空間。前にモニターもない。
博物館にでも行ったほうがよさそうな年代物で。しかも席はど真ん中で。身動きするも憚られる。
エコノミー症候群とはよう言うたもの。今度行く時はファーストクラスにしようと決心する(冗談)。
つうか、盆時でなければ、或いはサーチャージという言葉が流行語となってる昨今でなければ。
ファーストとまでは行かぬが、ビジネスクラスくらいには乗れるだろう金はつぎこんでいる。
どうも納得いかん。
太い体を丸めながらまた採点をするうち、食事どきに。
海外旅行を、或いはそれに伴う外国人との闘いを、「スーパーマリオブラザーズ」にたとえれば。
この最初に話しかけてくる客室乗務員は、いうたら、最初に出てくるキノコ怪人みたいなもんで。
思えば、前回七年前の米国行きでは、あたかも「スーパーマリオ」を初めてやった時の如く。
正面から突っ込んでいって、このキノコ怪人にすらやられていたものだが。
基本的な手続きを会得すれば、難なくクリアできるもの。この辺くらいは進歩したか。
しかし、一行で済ませてしまうのが悔しいほど長い長い長い夜を(ほんまは夜ではないが)経て、
SFに着いた時の、イミグレーションでは結構やられてしまった。言い訳になってしまうが、
ほんま、予想される会話ちうか、リズムがつかめなかった。こういう時は全く聞き取れなくなる。
マリオでいうたらピョンピョン跳ねるカメというところか。この問題には旅行中終始悩むことになる。
最近では、写真とられた上、指紋取られるのね。結構屈辱であったよ。オフィサーと来たら、
通じなくて、頭にきたのか俺の手を取って無理矢理指紋取りやがった。まあ俺も悪いんだけど。
言葉が通じない敗北感もあいまって、なんともいえぬ打ちひしがれた思いとなった。前途多難。
しかも、試合には到底間に合わない。本当は荷物をどっか預けて直接球場に行くつもりだったが、
なんかしんなりしてしまったので、まずは宿に向かうこととした。
向かおうとしたところが、地下鉄(バート)の切符の自販機が前に立ちはだかる。システムがわからん!
何やってもうんともすんとも言わない。あたかも、マリオのヘルメットみたいののように(しつこい)
しかも、後ろに人が並んでいるというプレッシャーが焦りに拍車を。ああ小市民、ああ小心者。
列に構わず恐ろしくマイペースで切符を買う、大阪のオバハンのずぶとさがうらやましい。
とりあえず、10ドル入れて適当に押したら、なんか出てきたので、それでのったった。
あとで調べたが、プリペイドカードを買うような方式だったらしい。事前に勉強しとけば、凹む。
この「とりあえず金払ったら、なんか出てくるやろ」という姿勢も、この旅行全体に遍在する。
反省することしきり、である。
しかし、地下鉄からの車窓に機嫌をなおす。陽光そそぐ大地。斜面に建つ瀟洒な家々。ヒルズて感じで。
おお!アメリカ!おお!カリフォルニア! と感動新た(市街地以外では地上を走る)
列車が地下に潜ってしまい、なんだつまらん、とヒマをもてあましたが。いや、ヒマにしてたらあかん。
どこで降りるかを見極めなあかんのだ。この、五感六感をフルに覚まして行動するのが、海外旅行の
醍醐味といえば醍醐味であると思う。いや疲れる点だといえばそうなのだが。
なんとか駅名も聞き取れ、無事下車。ユニオンスクエア近くの、もっと言えば、かの有名な
ケーブルカー乗り場の真ん前の宿に向かう。僅か徒歩二三分の移動である。もともとこの宿を選んだのは、
前にも書いたが、三日目オークランドナイトゲームを観に行くので、その帰りを考えて、であった。
駅からの道すがら。美しいビルと花一杯の街路、そして陽光。そして寄ってくるホームレスが印象的だった。
宿のフロントクラークは、見た目はクッパ大王もびっくりの、貫禄のある黒人女性だったが。
見た目とは裏腹に(失礼!)、姐御肌というか、頼れる感じだった。コミュニケートは問題なく。
部屋も、存外にいい感じだった。高級感、というのとは違うが、シックな感じで好感が持てた。
元気が出てきて、改めて気付いた。そうだ、試合試合!! まだ間に合うはずである。
私は、野球の試合を途中から行くのと、途中で帰るのが死ぬほど嫌いなので、そのポリシーには反するが。
事情が事情だ。仕方ない。路面電車に揺られて、海辺の「AT&Tパーク」に向かう。
ここでも、乗った車両が途中で止まってしまったり、というアクシデントもあったが。
(事故ではない。そこまで行きの電車だった。雲雀丘花屋敷行き、みたいなもの(ローカル))
何とか到着。長年訪れたかった場所である。どうせ遅れているんだから、とすこし周りを散策。
大抵の球場がそうなように、最寄り駅から着いたすぐそこはホーム方向。そこから一塁方向へと向かう。
丁度甲子園で言うと「アルプス」の位置には、「ウイリー・メイズ・ゲート」と称される入り口があり、
かつての大選手ウイリー・メイズ(背番号24)を記念している。銅像はもちろん、24本のパームツリーが
植わっており。球場の住所までにウイリー・メイズが冠されているとか。こういう、歴史へのリスペクト。
アメリカのよいところである。歴史が浅いぶんだけ、持っている歴史を大事にしているのだろう。
この話は、また最後に蒸し返すことになるのでご記憶頂きたい。
そして「アルプス」から右翼へ回るとそこは海、である。かのバリー・ボンズ本塁打記録が
騒がれていた頃、ホームランボールを求めて、この海にカヌーやヨットを浮かべて、待つ人が大勢いた。
テレビで見たが、それはなんともほほえましい光景だった。この海に飛び込むボールは
「スプラッシュ・ヒット」と言い、この球場の名物でもあるそうな。バリー・ボンズの記録は、
疑惑にまみれてしまったが、記憶はそれとは関係なく。永遠のものである。
壁面には、「全ての落下物に注意せよ。ボールとは限らない。」というレリーフが施されている。
こういった「シャレがわかっている」というのも、アメリカのいい面のひとつではないかと思う。
今はカヌーを浮かべる人も少なく、釣り糸を垂れる人がいるのみであるが。しかしのどかな風景だ。
右翼から左翼に回ると、そこは駐車場になっていて、あまり面白くなかったが。帰りに観ると
ここには「出待ち」の人が並んでいた。そういうファン心理も万国共通で愛すべきものである。
いかん、時間を使いすぎた。中からは、アナウンスと歓声が漏れ聞こえている。
気分が高まってきた。いよいよ乗り込むか。
っとここで時間がなくなって参りました。
すみませんがまた次回に続きます。(あくまで引っ張るで(笑))