阪急電車。

阪急電車

阪急電車

どうしようもなく抑えきれぬオタク衝動にかられて購入。
しかし、ま。有川浩やもんな。オタク本からはほど遠く。
(知っていたような口をきく)
けれども、清涼感溢れる良著。甘酸っぱい思いに浸りたい方には
お勧めする。ただし、サブイボには細心の注意が必要。
阪急今津線を走る電車を巡る、さまざまな乗客の人間模様を描く。
この今津線を選んだところに、著者のセンスが伺える。
乗ったことのある人ならばお分かりかもしれないが、
なんてゆうんだろ、生活感が出すぎてもいず無さ過ぎてもいず。
地方でもなく都市でもなく、地方でもあり都市でもある。
ハイソな感じもある一方で、競馬のオヤジでごった返したり。
なんとも、清濁いろんなものを合わせ、ゆったりと流れ行く。
そんな感じで。青春小説の舞台としてはまさに格好かと。
自身、小さな頃は塾通いで週に数度乗っていた線であり、
最近では、家探しで何度も使った線でもあるということで、
読むほどに、目の前に風景がひろがりそれはそれで楽しかった。
しかし、「今津線に全く乗ったことのない人が筆者の描写に従い
心に思う情景」というのは全く体験できなかったわけで。
その意味ではいささか、残念でもあった。ま、残念に思うほど
素晴らしい描写がなされている、とも言える。
惜しむらくは、今津線を扱うからには、阪神国道と今津を
もそっと沢山扱って欲しかった(そうでないところがまた、
両駅らしいといえばらしい)ことと、「ダイヤモンドクロス」
についての言及が欲しかったことがあろうか。
え、それ何? それは・・・・と、
それをお伝えするには、長いオタク話をせねばならんので割愛。
*****
正直、有川浩、という作家は知らんかった。
はじめ「ありかわひろし」という男性かと思っていた。
しかし、読むほどに、「これは絶対男の視点やないなあ・・・」
という箇所が続出。カマ疑惑すらかけてしまったのであるが。
ああ、女性ね。何のことはない。
お読みになる人は、その辺も楽しんで頂ければ幸い。