夜のピクニック。

読了。
夜の…と聞いただけで色めき立ってしまう自分のお下劣ぶりには
ほとほと閉口してしまうが。お下劣とは全く対極にある爽やかな青春小説。
いやいや。どうも、爽やかすぎるんだな、これが。
「高校生活最後を飾るイベント『歩行祭』。それは全校生徒が夜を徹して
 80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓い
 を胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を
 清算するために、、、」 とは、背表紙にあるこの本のあらましだが。
設定の荒唐無稽さもさることながら。。。なんかなあ、この本のキャラ。
みんな眩しいほどに、青春してるっ、て感じで現実感に乏しかった。
特にねえ。女流作家だから仕方ない、と片付けていいんかしらんが。
男の子がきれいすぎるな。なんやろ。この年代でも男ともなると、もっと
脂ぎっているというか、烏賊くさいというか(何言ってんの)。
あー。現実の私がそうだからって、それにあわせることはいらんか。
もっとも、せめて小説の中だけでも、きれいな男がおっていいんか。
あるいはなあ、こんな、好いた腫れたのバーゲンセールなんかいな、
普通の高校生は、というのもある。早い話がこれは嫉妬だろうが。
まあそれは別としても。なんでそんなことになってんのかわからん設定で、
多くの時間は単調に歩くだけ。時々会話があったりイベントがあったり、
で変化はあれ、無限の歩みが繰り返されるだけ。これ、人生の縮図
なんかもしれん。「そんなやつおらへんやろ」と、大木こだまみたいな
こと言いながら読み、最後には知らん間に涙を流していた。なんか悔しい。
読むときの自分の状況によって、味わいが大きく変化する本とも言える。
今やったらぷち感動やけど、高校生の時読んでても、はぁ、てなもん
だったかも。あと十年くらいして読んだら、涙が止まらんかも。
*****
「時間の感覚というのは、本当に不思議だ。
 あとで振り返ると一瞬なのに、その時はこんなにも長い。
 一メートル歩くだけでも泣きたくなるのに、あんなに長い距離の移動が
 全部繋がっていて、同じ一分一秒の連続だったということが信じられない。
 それは、ひょっとするとこの一日だけではないのかもしれない。」
*****
ちなみにこの447ページの本は、始まって18ページめで早々と、
「妊娠小説」であることが判明した。早すぎやろ。いろんな意味で。