伝わりにくい感動。

多くの方にとっては「今更」という話なのかもしれないが、
先日テレビを見て知り、いたく感動した話があるのである。
ネットで買い物等をする時、もちろん100%の安心は禁物なのかもしれないが、
概ね我々は安心して、住所やカード番号等の個人情報を相手に伝えられる。
その安心感を支えているのが「暗号」である。我々がこちらで打ちこんだ情報は、
暗号化されて送られ、届いた先で解読される。途中で解読されることがあってはならぬ。
暗号と言えば、古くは赤穂浪士の合言葉「山・川」がそうなのだろうし、新しくは、
ニイタカヤマノボレ」「トラ・トラ・トラ」等の隠語文が頭に浮かぶが(どこが新しい)。
或いは野球等スポーツの「サイン」もそれにあたるのかもしれない。ごめん適当に言うてるが。
・・・・・
話はそれるが、自分は学生時代野球をやっていたが、サインを読むのが大の苦手であった。
珍しく塁に出て二塁まで進み、そこで監督のサイン。「三塁へ盗塁せよ」と自分は読んだ。
常識的客観的に考えて自分に盗塁のサインが出ることはまずない。わかってたはずだが、
たまに塁に出たことでテンパってたのだろう。半信半疑ながら、おずおずと二塁を離れた。
当然ながらあっさり塁間で頓死。伏し目がちにベンチに目をやると皆が目を丸くして茫然。
かくて「ムーラン謎の三盗事件」は球史に長く語り継がれることとなった(わけはない)。
思い出ついでに言うてしまうが、自分は進路に悩んで血迷っていた時に、某地方公務員の
試験を受けたことがある。その試験準備で「暗号解読」をやってたなあ。懐かしいなあ。
一次試験は受かったが、丁度二次試験と、後に入退社することとなる会社の面接が重なって、
結局そっちは辞退してしまったのだ。そっち選んでたらまた全然違う人生やったんかなあ。
・・・・・
といい加減、何の話やったか。暗号、であった。
そういう合言葉や隠語をその都度決めているのか、というとそういうことではない。
いちいち決めるのでは非常に煩雑であるし、しかも合言葉のルールをどうやって伝えるか?
という問題も発生する。大量な情報を世界規模で瞬時にやりとりする現代社会においては、
だれもが簡単に使えるが、破るのはとてつもなく難しい暗号が必要となる。
そんなことが可能なのか?というと、偉い人はおったもんで、それが可能なのである。
難しい話は割愛するが(というか理解でけてへんのだが)、なんでもそれに数学の理論が、
特に素数素因数分解が利用されているのだとか。例えば43×53は2279、とすぐ答えが出る。
しかし2279は43×53だ、とわかるのはどえらく苦労する。この差がその暗号の根本だとか。
これを聞いて、これすごくない? と自分は感動した。素数とか素因数分解とか、昔やったが、
こんなん何の役に立つねん? と思い反発してたが、立派に役にたっとるがな。
ただ、この感動を人に伝えるのは難しいな。「素数は暗号に役立ってるんだって!」といって、
「おおそうか」と言われてしまうのがオチではないか。とほ。
・・・・・
もひとつ。昨夜はヨメが出張でN古屋(また伏せるか)に行ってていないのをいいことに、
職場から帰宅後、ねこsにエサをやってから、不良中年は行きつけのバーに繰り出した。
そこは半分スポーツバーみたいになってるのだが、画面ではサッカーが映っていた。
聞くとプレミアリーグ?の昇格プレーオフ?で、ウエストハム?対どっか?の試合らしい。
殆どの客は最初、観るともなしに観るか、概ねスルーしていたのだが、例外が一人いた。
ウエストハムのユニフォームを身に纏った青年が、食い入るように試合を観ていた。
席が近かったので、少し絡んだのだが、なんでも昔好きな選手がおったので、そのチームに
肩入れし始め、イギリス留学時に現地に通いつめて、すっかり虜になったということである。
彼は選手の一挙手一投足に一喜一憂し。味方ゴールには歓喜の叫び声をあげ、相手のそれには
この世の終わりくらい落ち込んでいた。いつしか店内の他の客も彼のチーム、というか彼を
応援し始めた。結局終了間際の劇的な決勝ゴールで、彼のチームはプレミア昇格を決めた。
拍手に沸く店内。泣かんばかりに喜ぶ彼と、自分はがっしり握手した。て、なんでやねん。
彼と店内の盛り上がりを見て、自分もそれなりに感動したが、それでもやはり。
彼の中の感動はその百倍二百倍はあるんだろうな、とスポーツファンの一人として想像する。
・・・・・
すっかり長くなってしまった。ひとりの休日、暇に飽かせて…
以上、伝わりにくい感動の話、二本立てでした(と微妙に黒歴史も)。
明日はいよいよ金環日食ですな。その感動は、おそらく伝わりやすいものだと確信しますが。