花石物語。

花石物語 (文春文庫)

花石物語 (文春文庫)

これは、「はなえす」物語と読まねばならない。
学歴にコンプレックスを持つあまり、吃音になってしまった青年が、
故郷、製鉄景気に沸く東北の花石市(おそらくラグビーで有名だったあの市)に帰り、
失敗を繰り返しながらも、様々な出会いを通じて成長を遂げてゆく青春物語。
これも、昔読んだはずで、書棚にあったやつだが。何も覚えてなかったわ。。。。
ということは、私が今読んでいる本も、また忘れてしまうんだろうか、と萎える。
まあ、忘れてもいいように、ここにしかと書きとめておこう。
息もつかせず繰り広げられるドタバタ劇に笑い、主人公の成長に少しホロリと
させられる、というのはひとつとして。あと二つ、印象に残ったことがある。
ひとつは、第二次産業華やかりし頃の、元気だった日本像である。
その溌剌ぶりが、主人公の若さと重なり、エネルギー溢れた雰囲気を醸している。
第三次、第四次産業が忘れてしまった、懐の大きさというか、反面のうら寂しさというか。
いい意味でも悪い意味でも、人間味のある世界。それがここにはある。
今ひとつは、丹念なルビうちで再現される、東北弁の不思議な響きである。
究極の言文一致と言ったら言い過ぎかもしれないが。キャラクターに命を与えている。
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否々(うねうね)、我が家(おらどこ)の婿(むご)さ食(か)せる位(ぐれー)なら
野良猫(ほっつきにゃー)さ食(か)せだ方がまだ良いて。ま、それはそれどすて、
船長様(さ)は小母ちゃさ、示談(づだん)ば頼んで居(え)なすった様(よ)だった。
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全てが、こんな調子である。啄木ではないけれど、ふるさとのなまり、十分楽しんだ。
あ、別に東北がふるさとという訳ではないが。
しかし、この本、下ネタ多すぎなんだよなあ。。。 生徒には薦められん。
ま、ほとんど理解もできないだろうが。私も全くわかってなかったし。
あと、主人公がコンプレックスを抱いている、四谷の鷲の紋章の大学。
門中の名門だと思うのだが。。。 時代のせいなのか。
はたまた主人公の贅沢な悩みなのか。