『テルマエ・ロマエ』。

*****
母の日の夜、レイトショーで観てきた。母よ、夜更かし息子&娘を許せ。
ヤマザキマリ氏による同名漫画を原作とした映画化だ。自分は原作は未読であった。
「原作の映画化」に関しては、今まで原作既読で臨んでがっかり、ということが多かった。
が今回に関しては、その心配はなかった。むしろ呪縛を離れのびのびと楽しめた気がする。
古代ローマテルマエ(=風呂?)設計士である主人公が、設計に悩みぬいていたところ、突然に、
全くの異国を探訪することとなり、そこで目にした「平たい顔族」による文化・文明に衝撃の連続…
と、映画は始まる。古代ローマ人の配役が秀逸。あれだけ濃い人をよく集めたものだ。怪しさ満点。
それを筆頭に、荒唐無稽な場面と人物がこれでもか、と畳掛けてくる。まさに抱腹絶倒の前半。
これどうなっていくんだろう、と心配になってきた頃からはいささかサスペンス的要素も加わる。
まさに古代ローマ史への挑戦という感じか。そして最終版で得られるカタルシス。観終わった後は、
まさに「テルマエ」の効果か。風呂に上がりのような、ほっこりと、さっぱりとした気分となる。
そのまま映画館で泊まっていきたかったところであるが、「湯ざめ」に気をつけつつ深夜の帰宅。
て、何だか「まわしもの」のようなレビューではありますが(笑)。正直な気持ちであります。
世界一の風呂大国・日本に住む一億人の風呂好きに、是非観てもらいたい秀作であると思う。
と、持ち上げるだけ持ち上げておいたところで、恒例の如く、ウラに引っ込みます。
以下、ネタバレ。すいません、今までの反転方式では、スマホ等で見られない方がいるらしく。
できるだけ下に下げときますわ。












とにかく全身彫刻状態の阿部寛様の御姿を見るだけでも、金を払う価値がある。加えての熱演。
「平たい顔族」の文化に接する時のリアクションが秀逸。自分が海外に行った時の心境を思い出した。
恐怖敗北感劣等感、いろんなマイナスのことあるんだけど、とにかく楽しい興奮であるなあ、と。
また、主人公の苦悩や弱さについても好演している。現代人の悲哀にも通じる共感がそこにあった。
全体を覆う「大きなギャグ」もそれはそれは面白いんだけど、この映画、「作りこんでいる」というか、
諸所に散りばめらている「小さなギャグ」も何個か見つけ、そのたび「おいおい」と身を乗り出した。
例えば、皆で協力して工事している時、一番ヨボいじいさんが、ええと、あれ、なんていうのかなあ、
L字型の器具を両手で持って何やら調査していたり。(調べた。「ダウジング・ロッド」と言うらしい)
大団円のとこで、主人公の妻を寝取った友人が一緒に喝采に加わっていたり。お前あかんやろ!とか。
是非もう何回か観て、そいう小ネタを探してみたいところだ。
大団円と言えば、そこで高らかに流れる『Aida』。あとワープ(?)シーンでの『Nessun Dorma』。
サッカーファン・スポーツファンとしては、これらを聞くと自然とテンションが上がってしまって困った。
しかし映画で『Nessun Dorma』(誰も寝てはならぬ)とは、洒落がきいててよい。寝ませんでしたよ(笑)
ま、イタリア通、オペラ通の人からしたら、オペラなめんな、と腹立たしく思うかもしれんけど。
自分らのようなライトな層には、それなりに楽しめた気がする。
あと上戸彩である。今回の映画では重要な鍵を握る人物であり、それなりに迫真の演技であった気がする。
そして、エンドロールではサービスショット(?)もあったりで。本作品の中心を担っている。
しかしパンフで観たのだが、このキャラクタは原作にはなかったらしい。映画オリジナルのキャラだとか。
上戸彩出したかったんかな、と意地悪く思わないではないが、ただ今作品に関しては、今までに見た
もっとひどい無理矢理なヒロインと比べても、そんなに違和感はなかった気はするが。わからん。
それは自分が原作を読んでなかったからかもしれん。
そう考えてくると、なんか、知識が人間を幸せにするとは限らんよねえ。作中のクライマックスで、
主人公とヒロインが、ともに北極星を見上げて語り合うシーンがあった。ヨメはいたく感動したらしく、
「二千年前も、今も、人間はずーっと同じ星を見てたんだね…」と帰りに呟いていた。それを聞いて、
「歳差運動があって、北極星は二千年もたてばずれてくから、今と同じには見えてへんのちゃうか」
と答えてしまったら、それから微妙な感じになった。これはとんだ「湯ざめ」であったよ。
いや反省反省。
ま、こまかいことは気にせず、ぼけえーーっと風呂に浸かった気で観れば、本当に楽しい本作である。
また風呂に、特に、スパワールドに行きたくなった。それが本作最大の効果かもしれん。
そんでもう一回あっためなおしますわ。て何がやねんね。